満足度★★★
嘘
全く異なるテイストの2作品を通じて、「嘘」について考えさせられる公演でした。
『溺愛』
福岡で実際にあった、看護婦による連続保険金殺人事件をモチーフにして、事件に関わった人たちの嘘と、劇場で役を演じているという嘘が重なり合って、不思議な雰囲気が感じられました。頻繁に役者がメタレベルでの台詞を話し、客が劇場で見ているものは嘘のような本当なのか、本当のような嘘なのか惑わされました。
大仰な台詞回しや、脱がされたり縛られたりする役者たちなどちょっとアングラ的な雰囲気も感じられる作品でした。最後のシーンがよく見えなくて残念でした。
『水飲み鳥』
高校時代の友人の死をきっかけに、集まった30代になった同級生たちの一晩の物語で、こちらは普通のストレートプレイでした。久しぶりに会う友人たちとの会話に見え隠れする距離感がリアルでした。嘘というテーマが物語の中心となる直前のシーンで突然現実的ではない演劇的演出が挿入されるのが効果的でした。BGMで流れるオペラのアリアが、物語の内容に沿った歌詞の曲が選ばれていて面白かったです。
2つの対照的な作品から「嘘」という共通の主題が浮かび上がって見えて来る感じが興味深かったです。
構成も役者も良かったのですが、両作ともはっきりした終わり方ではないせいか、何か物足りなさを感じました。