満足度★★★★
死者たちの儀式
オペラと題されていますが、歌手は歌詞のある歌はほとんど歌わず、テキストは録音された台詞と字幕で出されるという特殊な上演形態の作品でした。
物語は断片的に提示され、明確には表現されないのですが、父を訪ねて行った土地で死者たちのこだまを聞くという内容で、孤独感や倦怠感を強く感じさせるものでした。
奏者もただ演奏するだけでなく、役が割り当てられていてボディペインティングとボロボロの衣装を纏い、客席内に入ってきて演奏することもあり、舞台を観ているというよりかは儀式に参加しているような感じでした。
ギターやコントラバスは普通に演奏されることはなく擦ったり叩いたりしてパーカッションと共にノイズを奏で、荒涼とした雰囲気をかもし出していました。
トロンボーンは権力者の役を担っていて、それにふさわしい破壊的でかつ滑稽な響きが、この作品の中で唯一活動的であるのが印象的でした。
田中泯さんの死の苦しみを表すようなダンスと子供たちのイノセントな佇まいの対比が美しかったです。
音楽的には新鮮でかつ心のに突き刺さる繊細な音響構成(いわゆる「音楽」とは全然異なるタイプの音です)で素晴らしかったのですが、劇作品として観ると弱く感じました。今回は作曲家自身の演出だったのですが、他の演出家によるプロダクションを観てみたいです。