とても陳腐な芝居だと思った……
……かもしれない、あれらの写真がなかったら。いや、決して芝居が悪いと言っているわけではないんだけど、戦争関係のものっていくらでも感動しちゃう話ってあるわけで、ハードル高いじゃないですか。そんな中、舞台に大写しにされる写真に、圧倒的な力がある。それは、戦地にいる父親や夫や息子に送るための家族写真。家族写真といっても、父親や夫や息子がいない、欠けた所のある家族写真。人数も服装も表情も様々なんだけど、彼ら彼女らの視線のはるか遠くにいるのは、その写真に足りない誰かであり、帰らないかもしれない誰か。そう思って写真の中の人たちの瞳を見ていると、それだけで泣けてくる。その一方で、淡々と投影される写真が、お涙頂戴っぽくなる物語を現実に引き戻すような力もある。庶民の記録ともいえるしゃしん。その静止画をうまく物語に溶け込ませ、しかも効果的に使って独特の作品にしていると感じた。