百枚めの写真 公演情報 トム・プロジェクト「百枚めの写真」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    原作をうまく生かして、その世界を伝えてくれた
    市井に生きる(生きた)人々の悲しみ、怒り、楽しみ、そして、それらをすべて包み込む「生活」がそこにあった。

    ネタバレBOX

    原作『一銭五厘たちの横丁』は、昭和18年に撮影された、出征兵士の留守家族たちの写真をもとに、30年後の昭和48年に、そこに写っている人々はどうしているのかを、探していくドキュメンタリーである。

    原作は、かなり昔に読んだのだが、とてもいい作品だったという記憶がある。ただし、そこには1つの物語があるわけではないので、それをどう舞台にするのかが気になっていた。

    とは言え、作・演のふたくちつよしさんは、原作モノを雰囲気を壊さずに手際よくまとめる方なので、期待はしていた。同じトム・プロジェクトでは『ダモイ~収容所(ラーゲリ)から来た遺書~』でも、登場人物が多い原作の雰囲気を壊さず、見事に3人芝居に仕上げていたからだ。

    今回は、ドキュメンタリーのルポである原作を、ある1つの(架空の)家族に焦点を当て、多くの氏名不詳の人々の、声なき声を聞かせるように、丁寧に一般の人々にとっての戦争を語っていた。
    それは、決して、派手さや声高になることはなく、市井に暮らし、戦争によってその暮らしを破壊されてしまった人々の姿だった。

    実際の写真は、実に饒舌であり、そこにある物語は、舞台にあるそれよりも大きく感じてしまうこともあるのだが、台詞のやり取りが見事で、ある家庭の物語が静かに語られていた。

    冒頭に映し出される、雰囲気を残しつつ、変わっていく街並みの写真がこの物語を見事に語っていた。今回の舞台のために探し出してきたのだろうか。
    実際に原作に登場する写真が大きく映し出され、そのコメントが読み上げられただけで、本の内容を思い出し、また、そこに写る家族の姿に、家族の歴史を垣間見るようで、すでに目頭は熱くなった。

    原作にある写真をできるだけ使いたいということと(たぶん)、場面転換ということもあり、やや、写真+コメント、暗転が多いという気がしたが、それは、演じられる家族の動く物語の対比として、気持ちを穏やかにさせ、集中させる効果はあったと思う。
    実際、1時間50分の上演時間は、まったく長く感じなかった。

    初日ということもあり、やや固さもあったが、6人だけで、演じきった役者さんたちには大きな拍手を送りたい。

    ただ、冒頭で平成の現在から始めるのは、少々無理があるのではないかと思った。実際舞台の上は昭和48年と戦中・戦後の物語であり、語る主人公の年齢や、時代設定がわかりにくくなってしまうということがあるからだ。

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    2010/12/09 07:15

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