野球なんて大嫌い 公演情報 はらぺこペンギン!「野球なんて大嫌い」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    強いる笑いではなく引き出す笑い
    キャラクター達がくっきりと描かれていて
    それが笑いにしっかりとした腰を作り、
    物語のメリハリを生み出していました。

    ベタかと思いきや
    しなやかなふくらみを持った良質なコメディ、
    たっぷりと引き込まれてしまいました。

    ネタバレBOX

    開演までの客入れの音楽にしても
    冒頭の部分にしても
    特に洗練された感じはしない。

    「タッチ」の世界を重ね合わせることにしても
    バッティングセンターの雰囲気にしても、
    さらにいえば登場人物たちそれぞれの今にしても
    そこはかとなく熱の引いたような
    寂れ感がかもし出されて・・・。

    でも、その場所に織り込まれた笑いが
    雰囲気に沈まないのです。
    笑いに様々なベクトルと
    観る側を一歩越える踏み出しのようなものがあって、
    なんというか、笑いが場の色に強いられるのではなく
    観る側から自然に引き出されるよう。
    こういう笑いは抜けが良くて
    湿ったり乾貴すぎたりしない。
    心地よく笑える・・・。

    組み上げられた物語に
    登場人物たちのそれぞれが
    塗りつぶされることなく、
    緩やかに浮かび上がってくるような感じも良い。
    別にシーン全体に息を詰めるような
    繊細な質感などないにもかかわらず、
    それぞれのシーンでの個々の想いが
    しっかりとフォーカスを絞って伝わってきます。

    個々の場を作る役者達が
    それぞれのキャラクターの色をしっかりと作りつつ
    一方で気負うことなく
    全体としての場の空気を作り上げていきます。
    ザックリと細やかのバランス感が抜群で
    いくつもの想いが撚り合わされて・・・。
    ふくらみが舞台に生まれ
    その中で
    抜けの良さと留まる想いが
    さらに舞台に見る側を取り込んでいく。

    テレビに向っての野球応援のシーン、
    単純に熱するのではなく、
    どこかばらついた雰囲気が
    ぐんぐんと一つになっていく姿に
    ぞくっとくるような高揚があって。
    しだいに空気が一つに変わっていく過程が
    結構すごい。

    プロポーズのシーンも強く印象に残りました。
    オカマが面倒くさい部分をガサガサと省いていくのが絶妙に可笑しくて
    でも、そこから広がる想いの織り上がりに
    観る側までがキュンとなる。

    観終わって、
    高揚のあとの充足感のようなものが
    ぬくもりを持った心地よい感触でやってきました。

    単に面白かったという言葉だけでは語りつくせないものが
    この舞台にはたくさんあって。
    観終わって
    なにかほっこりとなりました。

    気楽に観ることができて
    重くなく、でも満たされる
    良質のコメディだと思います。

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    2010/12/03 06:59

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