満足度★★★★
鮮烈な声
普通ではない発声/発話法で語られる言葉と、シンプルで無機質な美術/照明によって、アルトーが書いたテキストが提示される、不思議な緊張感のある作品でした。
役者の扱い方が独特で、役を演じているわけでもなく、役者本人として舞台に存在しているわけでもなく、何かの機械の様な佇まいでした。奇妙な発声法の生声やエフェクターで変調された様々な声の響きが凄かったです(特にヘッドホンをしながらCDの早回しの様な発声をしていた女性は圧倒的でした)。言葉というより声そのものコンポジションでした。
身体表現も派手な要素はないのですが長時間静止していることが多く、役者の方は大変だったと思います。
大きなプールと、その中に立つアンテナ、後方にはアルトーの肖像(巻き上げられるようになっていて、その後ろには映像投影用のスクリーン)の空間がスタイリッシュでした。
ラジオ用に書かれたテキストを用いていることから、ラジオスタジオ的なブースがあったり、「放屁」という単語に対して口でその音を真似たりプールの底から大きな泡が出たりと案外テキストとベタに照応した演出もあって意外でした。
途中で流れた唯一のBGM、ビーチボーイズの『サーファー・ガール』が、この作品の中で一番普通な要素なのに一番異質に感じられたのが新鮮でした。
開演前と最後の聞こえるか聞こえない程度のホワイトノイズも効果的でした。
語られるテキストの内容はほとんど理解できませんでしたが、まさにライブでしか味わえない「演劇性」が強く感じられて良かったです。