満足度★★
意外にシリアス
挑発的な宣伝文句からどれだけぶっ飛んだ作品なのかと期待していたのですが、想像していたよりもまとまりのある作品でした。テキストの比重が高く(しかもモノローグや字幕ばかり)、翻訳を通じてしかそのテキストに触れられないのがもどかしく感じました。
冒頭は世界各国でピザを食べる子供を見たという他愛のないとぼけた話(グローバリゼーションや浪費社会の皮肉だったのでしょうが、話しっぷりにユーモアがありました)から始まるのですが、孤独や愛を音楽や映像を伴って暴力的に描き、痛々しいシーンが多かったです。体を拘束したり、無理矢理水を飲ませたり、全裸になったりと体を張った演技が壮絶でした。
本や水、牛乳、パスタの散乱する光景は舞台空間が広すぎたのか、あまりインパクトを感じませんでした。役者は出番でないときはステージ両袖に待機していて、タバコを吸ったりしていて、役を演じているのではなく役者本人として存在していることを感じさせる演出になっていて、いっそう痛々しさが引き立っていました。
今回の作品は残念ながら心を動かされるところがあまりありませんでしたが、当日パンフに書いてあった、『自分の墓穴を掘るための鋤をイケアで買ったよ』や『ユーロディズニーで私の遺灰を散骨する』等の過去の作品タイトルが興味深く、旧作もぜひ日本でも上演して欲しく思いました。