実演鑑賞
満足度★★★★
女流劇作家モスコヴィッチの本作は「紛争地域から生まれた演劇」リーディングで数年前取り上げられ(自分は未見)、今この時に観ておくべき演目か・・と、どうにか時間を作って観た。
2チームある内今見てみたい座組のAチームが観られた。
「これが戦争だ」と呼ぶに相応しい、戦場を舞台にした劇(正確には帰国した兵士の証言で構成)だが、具体的には2001年9・11後のタリバン政権を制圧にかかった米軍によるアフガン戦争を題材にしている。
とある部隊の4名が登場人物で、帰国後、ある作戦実行に携わった事の証言が聴き出されている。
他国の「体制」を否認し、介入した一方的な戦争である点でイラク戦争に通じ、そのように見ても違和感はないが、芝居の中でそうした「戦争の意義への疑問」が言語または態度で語られる事はない。むしろ国家の大義への信頼、忠誠、部下への責任感といった諸々を動員して「任務」へと自らを駆り立てている彼らが、厳しい現実に直面する。戦闘における仲間の死、自らの負傷もそうだが、作戦実行前夜の緊張ゆえの歪んだ行動、あるいは無防備に近づいて来る敵側の子どもに銃口を向ける自分、そうした場面に直面し、苦悩し、耐える、あるいは耐えきれず何らかの歪みが行動に出る。
本作の作者は自分の初名取事務所観劇であった「ベルリンの東」の作者であった。確か戦争犯罪(第二次大戦における)にまつわる戦後の話であったような。太い筆致の作家である。