実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/04/08 (火) 14:00
座席1階
ヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダという実の父と娘が共演した映画「黄昏」の原作となる作品。加藤健一が老父、劇団昴の一柳みるが老母、そして娘役が加藤忍という配役。今作は爆笑するような場面、セリフはないが、随所に言葉遊びを含めたユーモアが盛り込まれ、加藤健一事務所らしい仕上がりだ。
文句の多い、頑固な男性役をやらせたら、やはりこの人は天下一品だ。実際に同事務所のラインナップでもこのような役は多い。だが今回は、頑固で嫌みなことを言う中で娘の幸せを願い、娘が新たに息子として迎える13歳の少年と心を通わせていくところを、うまく演じている。
舞台は米メーン州の「ゴールデンポンド」と呼ばれる湖畔の別荘。老夫婦はここに毎夏訪れているが、この夏は、疎遠となっている娘と恋人、その息子がやってくる。老父はやんちゃな息子にいきなり本を読めと宿題を課す。少年はタメ口をきくなど態度は悪いが、何か感じるものがあったのだろう。比較的素直に読書を受け入れ、誘いを受けて一緒に釣りに出かける。
テーマはわだかまりを抱えていた父と娘の和解であり、老夫婦の支え合いであったりするが、少年と老父の関係性も興味深い。舞台は淡々と進んでいく。休憩を挟んで2時間10分は少し長く感じた。
ラストシーンが前向きなのは、とても安心できる。黄昏というと人生の黄昏を連想するが、その光景はこの戯曲ではとても輝いて見える。