実演鑑賞
満足度★★★★
翻訳家としての作演出者の名を知るのみでしかも冠に「音楽劇」とは、想像の埒外。一川華が「自ら書いた」作品世界への興味で、観劇に赴いた。
今この時この作品の上演へと、作者を駆り立てた背景が伝わり、メタ構造の多用と「説明し過ぎなさ」により中々抽象的な舞台だが、切実な何かを伝えている。主人公であるライターとその作品世界が交錯し、幾つかの登場人物群がメタファーを背負って現れるが、作品内か外か、あるいは敢えて指定せずか、見ながら追いつかない部分も。
主人公は編集者とやり取りするので書いてるのは小説かと思われたが、作品は映像ドラマの撮影シーンとして出現するのでドラマのシナリオか、あるいは「仮にドラマ化したら」の架空の撮影シーンか。作者は演じる役者を通して「作品の主人公」と会話を交わすので、架空の(脳内の)シーンの設定かも知れない。
(この作品の)作者によれば、創作のきっかけは5年前に遡ると言う。ビビッドな題材に取り組み、その中である問題提起が為される。ただ演出によってはもっとラディカルな問い掛けになり得た所、抽象性に紛れた感がなくもない。