或る、かぎり 公演情報 HIGHcolors「或る、かぎり」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    いい芝居を観た後の多幸感は何物にも代えがたい。帰路の足取りも軽くなる。そんな作品に出会えた。

    ネタバレBOX

    何といっても一つ一つの「言葉」が生きている。登場人物の人格やそれぞれの関係性、距離感が台詞によって鮮明に浮かび上がる。眼前で実際の家庭を覗き見ているような感覚に近いかもしれない。

    それに加え、言葉に命を吹き込む役者陣の力量(熱量も)が半端ない。特に父親と引きこもりの息子が真正面に向き合うラストシーン。有薗さんの演技に圧倒される。寡黙で不器用な父親が、母親の死を納得させるために息子に見せたあの姿。感動を通り越す何か、祈りのようなものを感じた。そして喧騒の後の静寂。父親が息子にコーヒーを淹れる間の沈黙の時間。ああ、なんと美しい「間」だろう。そう感じずにはいられなかった。

    台詞の巧みさも印象的だった。一家宅に同居する従姉妹、レンタル彼女、弟の嫁がそれぞれ引きこもりの兄に放った台詞が凛としていてグッとくる。

    舞台装置の配置も見事だったし、暗転時に流れるクラシックの名曲も沁みる。あらゆる点で私好みの素敵な舞台だった。

    それともう一つ、母親の死後、生前の母と三兄弟の食卓での和やかな光景(長男は透明人間だったけど)がさりげなく挟み込まれていたのが印象的だった。このシーンがないと母と息子たちの関係がどんなだったか、観客は直接目にすることがなかっただろう。(入院先には夫と元従業員の女性の訪問の場面しかない。)家族の物語なのだから母と子の関係は重要である。それを落とさず描いていたのには感心した。

    0

    2025/04/05 13:50

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大