実演鑑賞
満足度★★★★★
1984年の作品という「曰く付き」上演をはじめてみた。ここでしか上演しない作品で、その理由はまずは作品の長さが中途半端、一夜芝居には短すぎる1時間5分。組みあわせて一夜にするには、ミステリ劇だからあわせる作品も難しい、この当然の理由にも増して、演出の山下悟が、最初(1884-1989)には中村伸朗、と三谷昇、次は三谷昇、山口真司(2000-2010)とやってきた作品を引き継いでの上演するという、日本演劇界に珍しい繰り返し上演ロンググラン作品で、、今更他の座組でやるのは憚られるという事情もある。そういうライフワーク的な四十年の息の長さはさまざまなところに表れている。まず、殆ど宣伝されていない。私は「当日券あります」を頼りに出かけて前に来ていた客と並んで45分前にチケットを買い自由席の楽園に30分前に入った。ポツポツと客が来る。満席で50の小屋だから空席が多くなると劇場の温度が上がらない。やはり殆ど60才くらいからの老人が主力だが、民藝、こまつ座の他人頼りのダレた老人よりしゃっきりしている。開園時間前にぴったり、50の席が完全に埋まって補助席も出なかった(まぁスペースもないのだが)。これには当日券で適当に行ってみた私はびっくり仰天した。舞台の上と下ののあうんの呼吸。で、スッと始って1時間五分。
日本の演劇シーンも成熟したなぁとつくづく思う公演だった。もちろん下北沢の業界地図真ん真ん中でやっているのだから、この内容なら当然といえなくはないが、ようやく少し暖かくなった春にふさわしい公演であった。今年初参加らしい円のホープ清田智彦が、ここでも着実に点を稼いでリニューアルの成果を来年も見せてくれるだろう。楽しみにしている。