音楽劇 まなこ 公演情報 HANA'S MELANCHOLY 「音楽劇 まなこ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「心の傷を乗り越えた先に広がる世界」

     トラウマティックな体験と向き合いながらの創作を、ミュージカルや劇中劇など多様な手法を通して描く異色の音楽劇である。私はA班の初回を鑑賞した。

    ネタバレBOX

     小説『まなこ』を執筆している作家(角田萌果)は、編集者(キクチカンキ)から作中の主人公である眼子が男とキスするとき、事前に同意を得るべきと意見され激しく動揺している。編集者が去ってから、作家は作中の眼子(岩波椋夏)に導かれるようにして作品世界のなかへ入っていく。現実世界では編集者であったはずの男はいつの間にか映像ディレクターとなり、眼子がキスしようとするも踏ん切りがつかない様子をカメラで客席に向けて映す。さらなる深層心理への探求は禊という女(簑手美沙絵)を召喚する。禊の導きによって眼子は、作家が書けなくなってしまった所以を知ることになる。学生時代に知り合った男とともに隣室で催されているいかがわしいパーティに行ったときのことや、幼い日に見てしまった両親の暴力的なやり取りは、作家の心に深い傷を残していたのだ。

     主人公が産みの苦しみと闘う過程のなかで己の負ったものと傷つきながら向き合う様子を見ていると、創作の暴力的な側面について考えざるを得ない。こうした重いテーマを扱いながらも歌唱や振付、言葉遊びを用いてじつに軽やかな作品に仕立てていた点が本作の大きな特徴である。メインテーマとしてたびたび歌われる「まなこのまなこ」という歌詞は、冒頭ではアンサンブルのウィスパーボイスの合唱が耳に心地よく、作家が作品世界に没入していく場面でのinspiration(創造的刺激)とhallucination(幻覚)という歌詞の歌も幻想的である。主要登場人物以外は何役か兼ねて、作家の仕事場のインテリアやいかがわしいパーティの出席者、コロスのように歌唱を盛り上げたりするなどチームワークがよく取れていた。

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    2025/04/04 15:50

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