Better Days 公演情報 “STRAYDOG”「Better Days」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     沖縄の宝は海と空(そして人の心)。アクアを拝見。

    ネタバレBOX


     板上は、沖縄本島からフェリーで4時間の離島がメイン。主要五教科の成績が極めて悪かった者たちの教科合宿である。期間は離島滞在日数3日間。引率するのは担任及び教務主任と思われる教師。主任の大学時代の先輩が、教師を辞めてこの地に引っ越して居た為毎年やってきていたのであった。出演者は総て恐らく14歳以下の子供たちである。18時開演の意味する処が観て初めて分かった。子供が出演できる時刻に法的定めがある為である。
     歌ったり踊ったりするシーンも多いのだが、流石に若さというは凄い! と驚嘆する。体の切れがシャープなのだ。自分は完全爺の体になってしまったから自らの体に気を遣うようになった。そんな自分とは対極のスピーディーで軽やか而も健康的な動きに素直に驚いてしまった。アイドルタレントに極めて細かい点迄演出が指示を出し、人工的な厭らしさを感じさせるような点もない。のびのびと子供たちの躍動を舞台化する懐の深い演出と脚本の自然で大切なことを分かり易く而も柔軟に描いているしなやかさも見事で、子供たちの一所懸命にチャレンジする姿に好感を持った。
     ところで沖縄は国土の僅か0.6%に在日米軍基地の約70%が最も肝要な地域を占領し続けていることもあり、日本全国で最も貧しい県の1つだ。まして離島ともなればその経済的格差は甚大である。先輩は2人の子供(姉・レフト/弟・ライト)を養っている。この姉弟、漫才に鑑みライト兄弟と名乗っている。因みに2人ともに先輩の子ではないことが終盤明らかにされる。2人の父母は存命であるが、上記の経済的格差を埋める為に二親各々が出稼ぎをしていて帰島出来ないのである。
     今作には他にも注目すべきシーンがある。総てのテストを白紙提出した小学校時代成績トップの女子・えり。夫婦で島を訪れるダイバーたちにダイビングを教えて生計を立てていた父母を海難事故で亡くしたこの島の女子・ゆいの2人が潮の満ち引きや海岸線の地形等の条件で非常に危険な事態に陥るエリアで出会い互いの秘密を打ち明け合って、偶々目にしたウミガメの産卵時に懐中電灯で様子を見ようとしたえりを窘めたゆいの忠告と自然の摂理が教えてくれた真の知恵に気付き自分たちの生きてゆく術を体得するシーンだ。
     えりが何故、総てのテストを白紙提出したのか? 大人は先ず、それが一種の救難信号であることに即刻気付かねばならぬ。その訳は、観てのお愉しみ。また、ウミガメの産卵が二人に教えた真の知恵の解も然りである。
     閑話休題。沖縄の人々は優しく寛容だとヤマトンチューは思っていることが多かろう、実際ウチナンチュもシマンチュもゆったりとして寛容であり好感の持てる人が多い。然し、それは彼らが苦労し苦悩してきたことの裏返しである。自分達が人間として生きる為にそのような生き方が必要なのだ。それはパレスチナの人々が抱えている苦悩と基本的に通底している。抑圧の激しさに大きな差はあるが本質的に同じタイプの苦悩なのだ。この事実を意識して観ると益々深みが増す作品である。

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    2025/03/27 15:32

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