『フォルモサ ! 』 公演情報 Pカンパニー「『フォルモサ ! 』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/03/17 (月) 13:30

    座席1階

    面白さで定評のあるPカンパニーの「シリーズ罪と罰」。その演目としてどのような経緯でこの作品を上演することになったのかの経緯は分からないが、上演するに当たってスタッフ・キャストでこの演目の舞台となった台湾の山奥に出かけ、先住民族の集落を訪ねたという。真摯に物語と向き合う姿勢が、今作の秀逸さに現れていたと思う。

    戦前、日本が台湾を植民地化した。その時に、山岳地帯に割拠していた複数の先住民族を武力で平定して従わせたという歴史があったとは知らなかった。この舞台は、この先住民族を研究していた人類学者が主人公だ。
    北海道のアイヌ民族に対して、日本政府は民族の文化や言語の否定や、あるいは人類学的研究対象として遺骨を収集したりとかしてきた。それに対するきちんとした謝罪は政府や人類学会からもなされていない。今作で、山岳民族の遺骨を黙って持ち帰ってきた場面が出てくるが、当時占領者としての暴虐は武力で殺害していうことを聞かせるということに限らず、アカデミックの世界でも平気で行われていたことがよく分かる。
    当時のことを史実に基づいて描く以上、現代の視点からみると、主人公の人類学者の学問的振る舞いが先住民族を見下して虐げているのは事実だ。「罪と罰」にはその視点も入っているかもしれないが、今作では、この人類学者が単身、台湾総督府に逆らってまで先住民族と友好関係を結ぼうとしていたというヒーローとして描かれる。
    しかし、石原燃の台本はよかった。研究者としての矜持、熱意を貫くあまり、それは愛する家族を否定するような結果につながり、その妻と子ら家族との関係で物語が進行していくという形にしたのはドラマティックで感動的だった。職場の人たちも含めた人間関係も丁寧に描かれている。それを劇団員たちがきっちり演じているというのも、Pカンパニーの罪と罰シリーズの安定した面白さを裏打ちしている。

    今回もとてもよかった。吉祥寺シアターという空間の大きな舞台を有効に使った演出も秀逸だった。

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    2025/03/17 19:00

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