実演鑑賞
満足度★★★★
少年時代にフロイスが見たユダヤ人の処刑から話ははじまる。火あぶりの直前、ザビエルが告解を聞き取り、ユダヤ人は処刑されたが救われた。この話がラストに思い起こされる。
九州から京に上り、信長と面会。しかし秀吉はキリスト教を禁止し、フロイスは長崎へ。二十八聖人の殉死もおきる。
フロイスは「日本人は主人は家臣を殺してもとがめられず、父は子や妻を殺すことができ、女は一番下。この国では命は軽い」などと書き送る。欧米人の日本報告というと、知性や礼儀に感心したものが多いと思っていたが、フロイスは少し違ったらしい。知性や礼儀についての報告は幕末に多いのかもしれない。
フロイスの風間俊介は「導く人」なので、あまり感情的にならない。感情的なのは、下女のかや(川床明日香)に露骨に好意を寄せられて、わざと距離を置くところくらい。
武士・道之助は、九州ではやけに騒々しいが、フロイスを監禁しているようにも見え、よくわからない。そのごキリシタンになったらしく、フロイスに従うが、京でキリシタン追放令が出て襲われた時、信徒がさかわらず死んでゆくのを見て「布教の敵は邪教の教えではない。甘美なる死だ」と気づく。その後、朝鮮出兵に参加し、鼻を削ぐ戦場の地獄を見て「神はいない」と嘆く。この嘆きは真に迫る痛々しさだった。
商人・惣五郎はトリックスターのように、他の人物とは異質の存在。キリスト教徒なのに、武器。火薬の商売で儲けるのも「俺がやらなければ誰か別の人がやるだけ」と平気。二十八人の処刑を前に、「聖人の遺骸は高値が付く」「その血を布にしみこませろ」と、悲劇も商売の種にしてしまう。演じる戸次重幸は明るくカラッとやって嫌味がなかった。
いつものこまつ座より笑いは少なめ。なかなかスタティックで難しい題材に取り組んだ挑戦作である。
2時間40分(休憩15分含む)