実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/05 (水) 14:00
座席1階
前回はコロナ禍であったか、その時よりも着実にグレードアップしている。扇子を落としたり、せりふをかんだりする人もいたが、折に触れて挟み込まれるダンスは妖艶かつ激しく、スズナリの狭い舞台に目いっぱいの俳優を縦横無尽に動かした演出は感動モノだ。
雪之丞は中村屋の名優で、江戸での舞台は大盛況。しかし、彼には胸に秘めた「やるべきこと」があった。それは理不尽な経緯で命を絶たれた両親の仇討ち。芝居を見に訪れほれ込んでしまった姫との恋物語をもう一つの軸に、物語は進んでいく。
プロジェクト・ニクスは、1月に米ニューヨークの演劇祭に招聘されて寺山修司の「青ひげ公の城」を演じて大喝采を浴びた。その時のあいさつで、主宰の水嶋カンナが「次は女歌舞伎をNYでやりたい」と公言、ニクスにとって次の大きな目標となるのが今作のNY公演だ。
演出の金守珍は亡き唐十郎とNYのハドソン川で「ここでテント演劇をやりたい」と語り合ったという。もし、新雪之丞変化がテント演劇で行われるなら、摩天楼を借景としたラストシーンはどうなるのだろうか。実現すれば絶対に見たいポイントである。いや、花園神社でもいいから見たい!
雪之丞を演じた寺田結美は長身で見応えがある。桟敷童子の主要メンバーであるもりちえは新宿梁山泊出身。外に出ても堂々としていて安定感があり、何度も笑いと取っていたのはさすが。今回は雪之丞のそばに仕えた雨太郎を演じた紅日毬子がすばらしかった。ニクスのアングラ劇は、この「雪之丞」で一つの方向性が明確になったような気がする。