韓国現代戯曲ドラマリーディング ネクストステップVol.2 公演情報 日韓演劇交流センター「 韓国現代戯曲ドラマリーディング ネクストステップVol.2」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    【火種】
    戯曲の面白さ、演出の妙、そして役者陣の確かな演技力、その総合的な魅力が観客の心を捉えて離さない。韓国の戯曲だが、そこに描かれている内容は、単に隣国の事情だけとは言えない。勿論、韓国ならではの事情(徴兵制)も散見できるが、持てる者と持たざる者 そこに厳然たる事実が立ち上がる。

    説明にある「人間の欲望をグロテスクに描き出すブラック・コメディー」、その会話は漂流するかのようで どこに辿り着くのか解らない。その緊密にして滑稽な会話が邪魔されない設定が上手い。少しネタバレするが、舞台となる別荘は 陸の孤島のような場所にあり電波状況が悪く携帯電話が通じない。劇中では「沈黙の家」と言っていた。ここに居る人々だけの会話と行為、しかし その背景には多くの人が抱いているであろう(狂気と化した)感情が透けて見えてくるようだ。

    朗読劇だが ト書き だけが上手に座り、役者は片手に台本を持ち動き回る。脚本のテーマを十分に引き出す演出ー特に音響と照明が実に効果的で印象に残る。この作品、ストレートプレイという演劇で行ったらどうなるのだろう、という興味を持たせるほど面白い。
    (上演時間2時間 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、奥の上手/下手に葉のカーテン。その内側に形の異なる椅子、その向きは様々。上手に椅子1つ ト書きが座る。中央に丸テーブルと椅子2つ。基本、葉のカーテン内は待機場所(時に物置部屋)で メインはオープンになった客席側。

    物語は、説明にある通り 大学教授であるチェ夫妻は、ドイツ留学を控えた娘スンヨンの送別会を開くために別荘を訪れる。今の暮らしに満足していたが、娘が連れてきた婚約者ソンピルによって平穏は破れ 事件が起こる。娘と婚約者は30ほど年齢が離れ、しかもチェ教授が指導していた元教え子。彼は論文盗用の疑いで 以降 非常勤講師として生計を立てている。夫婦は体面や過去といった客観的理由で反対。一方、スンヨンやソンピルは愛情という主観的感情で説得にかかる。そのうち激論で興奮したのか、ソンピルが持病-喘息で亡くなる。その出来事(過程)の責任を押し付けあうためについた嘘がさらなる嘘を呼び、やがては別荘の管理人 キム夫妻とその息子ハヌルまで巻き込んで…。

    物語は、チェ夫妻が2組の人物たちによってリベラルな顔の裏にある、傲慢・欺瞞で野卑な心が暴かれる過程を可笑しく描く。第1は娘の婚約者、第2は別荘管理人夫妻で、夫々の思惑や鬱屈がチェ夫妻を追い詰めていく。ソンピルは愛情を前面に譲らず、キム夫妻は弱みに付け込む狡猾さ。そしてハヌルが素朴な疑問を投げかけることで、糊塗が広がり誤魔化せなくなる面白さ。いつの間にか スンヨンまでが、ソンピルの死を隠蔽しようと両親に協力し出す。誰もが自分本位の思考で立ち回る狡猾さを持ち合わせている。そのうち言葉遣いも下卑てくる。何事も金銭的なことで解決しようと試みるが、だんだんと足元をみられジワジワ追い詰められる。そして過去の恩義まで持ち出すが…。最後は狂気の惨劇。

    この不気味な朗読劇を見事な演出で印象付ける。外部(別荘地)へ電話連絡出来ず、ここに居る当事者だけで解決を図らなければならない という設定の妙。音響は雷鳴や蛙の鳴き声、音楽は軍歌や国歌を歌うといった効果付け。照明は幾何学文様、その表現し難さが心の中を映すようだ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/03/05 00:11

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