実演鑑賞
満足度★★★★
続いて「ハウスソナタ」を観る。この日は余裕の到着で丁度良い席を確保。が不眠気味がじわじわ来て寝落ち多し。台本を手に、時に移動し空間を認識させる通常のリーディングだが、戯曲紹介の企画とは言えリーディング表現の可能性を見たい欲求から、評価も細かくなる。以前のこの企画では通常3演目が並び、演出、演者は別々だから良い意味で?コンペの要素ももたげるが、二つとなると一対一の対決の様相が(そういう見方をすれば)出てしまう。
今作は韓国現代の風俗、社会の空気感、生活者の気分が台詞の背後にあり、従って地味に難しい素材と思われた。交通整理上の難しさと役者の演技が見合っていない、と感じる場面が多かった(平易な言語による会話だが、言葉ヅラに出ない文脈の情報が多い事が想像された)。
冒頭は語り手の障害ある子を指揮者に見立て、他はズラリとオケの楽団員のように譜面台を前に座って指揮を待つ形。期待させる出だしだったが、役者が喋る台詞の裏の書き手の意図とそれに対する正解を脳内で再構成する作業が序盤から始まった。
役者の力量と言ってしまえばそれまでだが、演出以上に翻訳が気になって戯曲本に目を通した所、まだ序盤だが戯曲の難しさ(翻訳上の難しさも)に直面。言動の微妙なニュアンスありきで書かれた台詞である事とか、台詞に込めた作者の意図を探るのが大変で、という事は翻訳段階で明確な解釈による語句のチョイスを留保している、とも見える。(要は読み進めづらい。)
良い戯曲は俳優が書かれた言葉をただ読むだけで作品紹介になり、のみならず更には作品を高揚をもって味わえるが、中々そこに到達しがたい感触。
ふと思い出すのは以前本企画で3作の一つを担当した演出家がシンポジウムで、準備段階でのトラブルで如何に困難があったかを縷々述べるという事があった。(演出の万里紗氏が何を思うかは判らないが。)
終演後は暫く作品を反芻し、想像逞しく思い描いたが、本作の着眼はユニークでその設定と今観た舞台の情報を元に自分が感動の内に劇を観終えた瞬間を想像した。想像できた。戯曲を読み直してみよう。
実演鑑賞
満足度★★★★
火種を観劇
椅子テーブルといった
シンプルなセットに
すだれ状に垂らした植物を
左右に配して部屋とか
待機場として扱ってました
演者は衣服は
らしい服装ながら
手には白い台本を持ち
読んでゆく朗読劇
ナレーション役さんも
始終舞台上手に居てました
その語り通りに
動く出演者の動きも
時に面白くして
ダークコメディ風味出してました
穏やかで平和な日常が
徐々に綻びを見せていき
ここまで崩壊させるかー
という驚きの展開だった
2時間強の作品
全席自由
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/04 (火) 14:00
大学教授であるチェ夫妻は、海外留学を控えた娘の送別会を開くために別荘を訪れる。彼らは自分たちの平穏で豊かな暮らしに満足していた。
しかしその平穏は、娘のチェ·スンヨンが婚約者で少なくともスンヨンとは30は離れた大学非常勤講師の中年男を別荘に連れてきたことを発端にどんどんお互いに目を背けていた都合の悪い事実(不倫など)が浮き彫りになり、今までリベラルな考え方で寛容に見えた教授のチェ·ミョンガンも化けの皮が剥がれたように偏見が露呈し、妻のカン·スンオクも今まで上品で優しく見えたのが、娘の婚約者が中年男だと分かり、娘と30近くも離れていると知って忌避感が露骨に現れ、豹変して品位の欠片もなくなる。そして成り行きか、故意かは判らぬが婚約者チン·ソンピルを巡って事件が起き、現場にいた管理人家族の息子キム·ハヌルが犯人に仕立て上げられそうになるが、それをハヌルが阻止しようとしたりと、事件の責任を押し付け合うためについた嘘が嘘を呼び、お互いに保身に走り、疑い合う。
後からパーティー(娘の送別会)に参加した管理人家族のキム·チョルス夫とチョン·エラン妻に事件のことを隠し切れず、物置部屋に置いた死体を見つけられたので死体を隠し通すことはもはや無理とチェ夫妻らが悟り、何とか真相までは突き止めさせず、責任逃れをしようとあがく様が大いに笑え、終盤でお互いに追い詰められ、今まで我慢してきたものが一気に吹き出し、パワーバランスが崩れ去り、最期に残ったのはキム·ハヌルのみという終わり方に愕然とした。
非常に韓国社会の暗部、富裕層の偽善、欺瞞、貧困層の鬱屈した気持ちなどが劇を通して浮かび上がり、韓国社会の格差社会を嫌と言うほど震撼とさせられた。
この作品は、ポンジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』と全体的には比較的テーマ性としてもかなり似かよっていると感じたが、ポンジュノ監督の映画以上に救いがなく、暗鬱とした気分になり、もはやキム·ハヌルに輝かしい未来が見えない終わり方に現実を突き付けられた。しかし、一部の光さえない徹底した不条理コメディサスペンス劇にある意味、清々しささえあった。
やはり不謹慎だとは思うが、人の不幸を劇で観て、家族が崩壊し、知り合いで信頼しあえていたと思っていた管理人家族との関係性も壊れていきといった過程を観ていると、日頃のストレスや鬱憤が晴れて、気持ち良かった。
実演鑑賞
満足度★★★★★
【火種】
戯曲の面白さ、演出の妙、そして役者陣の確かな演技力、その総合的な魅力が観客の心を捉えて離さない。韓国の戯曲だが、そこに描かれている内容は、単に隣国の事情だけとは言えない。勿論、韓国ならではの事情(徴兵制)も散見できるが、持てる者と持たざる者 そこに厳然たる事実が立ち上がる。
説明にある「人間の欲望をグロテスクに描き出すブラック・コメディー」、その会話は漂流するかのようで どこに辿り着くのか解らない。その緊密にして滑稽な会話が邪魔されない設定が上手い。少しネタバレするが、舞台となる別荘は 陸の孤島のような場所にあり電波状況が悪く携帯電話が通じない。劇中では「沈黙の家」と言っていた。ここに居る人々だけの会話と行為、しかし その背景には多くの人が抱いているであろう(狂気と化した)感情が透けて見えてくるようだ。
朗読劇だが ト書き だけが上手に座り、役者は片手に台本を持ち動き回る。脚本のテーマを十分に引き出す演出ー特に音響と照明が実に効果的で印象に残る。この作品、ストレートプレイという演劇で行ったらどうなるのだろう、という興味を持たせるほど面白い。
(上演時間2時間 休憩なし)
実演鑑賞
満足度★★★★★
戯曲は未知数だが、演出を見るといずれも秀でた女性演劇人ゆえ、今回は両方を観たかった。観られて良かった。
まずは「火種」を拝見。
圧巻。戯曲も面白く、リーディングのレベルを遥かに超越した出来。手にした台本の存在も忘れてしまう桑原氏の捌き、完璧に役を体現した俳優らに驚嘆であった。
(という訳でリーディングである事をいつもは差し引くのだが今回は5星に。)
実演鑑賞
満足度★★★★★
すばらしかったです。韓国のアパートを舞台とした話ですがなかなかよかったです。役者さんの朗読以外のちょっとした演技もすばらしかったです。舞台の内容がまさにあーぱつ・あぱつなので舞台の最後にAPT.が流れるかな…と思ったら流れませんでしたねw 舞台の内容からして(あと権利の問題からして)流れるわけないか^^