実演鑑賞
満足度★★★★★
両方見たかったがギリギリチケットにありつけた(プレイガイドに残ってた)マクベスを拝見。二、三年に劇作家女子会。での、昨年は劇団アトリエでの「ドグラマグラ」(共に一人芝居)に圧倒された中川佐織はどちらに?と見ればマクベス組。となるとあの狂気をマクベス夫人を魅せてくれるか、、と自分の予想を確信していたら、7名全て女性俳優。中川女史はマクベス役であった。
75分にまとめたマクベスはムーブや集団表現を挟んで要所を描き出す作りで、その舞台として中央に円形の台、その奥部分に高い椅子を据え、王と臣下、城と下界の上下、下は台上と平場を使ってコロス的・舞踊的な円の動き、また上手壁側の階段も使って動きの変化を付けているが、カットインの真っ赤な照明やスモークも含めて全体としては割合に丸みのある(尖ってはいない)作品主体の演出に見えた。
そして叙事詩の主人公マクベスの、世界と己の人生への最高潮にシニカルな目線が、中川女史の低く抑えた(だが破裂音の混じる)声に抑制的統制的に籠められ、静かなクライマックスを作っていた。
無残な世界をその見開いた眼に映す(この世との別れの時に全身からの恨みを込めて)小さき存在は、外からの理不尽な攻撃をまばたきせずに見据える幼き子らの眼差しと同様に、己の内からなる不条理を同じく見据えている。この目が、今という時をも正しく見つめる目であるべき哉、と、はたと思わせられたのである。