トウカク 公演情報 ラビット番長「トウカク」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    (A)
    奨励会からプロ棋士になれずに脱落した男(渡辺あつし氏)、書いた将棋小説が話題を呼びTVで特集される。共に番組に出演するのは奨励会同期で名人戦に挑戦するまでになったプロ棋士(三浦勝之氏)、陽気なアナウンサー(江崎香澄さん)。

    小説の主人公は天野宗歩(そうほ)。江戸末期、世襲制だった名人位にはなれずとも実力最強の棋士として名を残す。殆ど彼についての文献は残っていない。残るのは棋譜のみ。読み込んだ棋譜から彼の生き様を類推する作品。

    TV番組の公開収録の設定でありつつ、江戸時代の空間にタイムトリップした3人が天野宗歩の生涯を観察していく形。まずは天野宗歩の死後に廃墟となった住家。彼は刃物で目茶苦茶に斬り刻まれて殺されていたという。余程の怨恨か?そして床にばら撒かれていた将棋の駒。一つだけ足りない。

    不潔でだらしなく酒に溺れ将棋以外何の取り柄もない天野宗歩(大川内延公氏)。
    義理の父である大橋本家十一代大橋宗桂(井保三兎氏)。
    その息子、宗珉(宇田川佳寿記氏)〈史実では大橋分家の八代当主〉。
    家元出身以外で初の名人位となった十二世名人・小野五平(東野裕〈ゆたか〉氏)の若き日。
    江戸時代の将棋家元三家は大橋本家、大橋分家、伊藤家。
    伊東家の当主伊藤看寿(野崎保氏)、詰将棋の天才作家として名を残す一族。
    実在した盲人棋客・石本検校(松沢英明氏)。
    賭け将棋の胴元・剛吉(西川智宏氏)。
    女郎屋の女将お時(柴田時江さん)。
    労咳持ちの遊女・お龍(満〈みちる〉さん)。
    その妹、お菊(花田咲子さん)。

    西川智宏氏がMVP。内田健介氏と存在感がだぶる。物語を回すのはこういう粋な人物。
    柴田時江さんも作品の文鎮。きっちり場を押さえてみせる声。もう一つの役も観客を興奮させた。
    満さんと花田咲子さん姉妹も配役の妙があった。

    ネタバレBOX

    ヒールの剛吉がお菊を使っての賭け将棋。別室の伊藤看寿と石本検校が指し手を決め、通し(サイン)でお菊に伝える。出演陣が少なく限られている為、狭い世界で回している感覚になってしまうのが残念。伊藤看寿がこんなことをやるべきではない。

    お菊の話をもっと膨らませて歴史には残らなかった天才女流棋士の物語を絡ませても良かった。
    渡辺あつし氏が小説を書きつつ天野宗歩の棋譜の謎に躓く方法論もあった。「何故こんな将棋を指したのか?」をテーマに納得いく仮説を立てていく。そこで天野宗歩は死んでいない結論に辿り着く。棋譜版『ダ・ヴィンチ・コード』。

    語り口は面白いがテンポが悪い。話が賭け将棋の単調な繰り返しばかりで盛り上がらない。登場人物達が自由に生きていない。ただ、無から力尽くで棋士の生き様を創造する作家の苦しみは察するに余りある。作家の過渡期の生みの苦しみなのだろう。

    『トウカク』の意味は解らない。「頭角」(天才)に角を打つ意味を込めて「投角」のダブルミーニングか?

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    2025/02/17 20:23

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  • ヴォンフルー様
    「トウカク」ご観劇いただきありがとうございます!
    ご感想もいただけて嬉しいです!

    2025/02/20 03:06

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