ハイ・ライフ 公演情報 流山児★事務所「ハイ・ライフ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/02/09 (日) 14:00

    このジャンキーたちの疾走感はどこから来るんだろう?
    ムショから出たり入ったりを繰り返す行き当たりばったり人生の、どこからこんな
    転がるようなスピード感がほとばしるんだろう?
    怒涛の台詞に見ている自分が前のめりなっていくのが心地よい1時間50分。
    終わり方がまた心憎い。

    ネタバレBOX

    対面式の客席を挟んで長方形の舞台。
    四隅には固いベッドが置かれ、ハケた役者はそのベッドへ倒れ込んでいく。

    ディック(千葉哲也)はジャンキー仲間でも策士で通っている。
    今も銀行のATM強盗計画を立てて、昨日7年ぶりにムショから出てきたばかりの
    バグ(塩野谷正幸)を仲間に引き入れようとモルヒネで誘っている。
    もうクスリは止めたんだ、と言いながらまた昔と同じ生活に戻って行くバグ。
    ドニー(若杉宏二)は人の好いコソ泥、薬のせいで内臓のほとんどは移植が必要な状態。
    短気で暴力的なバグを怖れているが、ドニーもまた、ディックの計画に無くてはならない
    メンバーだ。
    そして一人だけ、ムショ暮らしの経験が無い色男ビリー(小川輝晃)も今回初めて
    一緒に仕事をすることになる。

    みんな破たんしたような人生なのだが、一人ひとりを見ると誰もが持つ弱さを体現していて
    その個性は哀しいほど魅力的だ。
    銀行の前に止めた盗難車の中で、仲間割れしそうなメンバーを必死でなだめる
    ディックの呼吸につられて、観ている私の肩に力が入る。
    いつ爆発するかと息をのんでバグを見ているときも、どもりながら言い訳を重ねる
    ドニーを見ているときも、”殺られる前に殺る”気分でナイフを突きつけるビリーを
    見ているときも、、彼らに感情移入せずにいられない。
    一緒に切羽詰まって追いつめられて、私の気分もどん詰まりだ。
    そしてものの見事に、計画は失敗に終わる。

    ビリーの挑発を受けて、逆に彼の手からナイフを奪って刺し殺してしまうバグ。
    血にまみれたナイフを、気を失ったドニーの手に握らせて逃げるバグとディック・・・。

    なのにあの終わり方、爽やかな明るさは何だろう?
    ドニーは刑務所から病院へ送られ、必要な臓器移植手術を受けて元気になった。
    そしてバグの「なあ、ビリーは俺に殺されたかったんじゃないか?」という意味のひと言。
    救われないジャンキーが皆救われて、また笑って次の計画を考え始める。
    失うもの、守るべきものを持たない彼らジャンキーは、ある意味最強だ。

    この4人全員に感情移入させる役者陣が秀逸。
    台詞もキメッぷりも凄まじいほどのリアリティに首根っこを押さえつけられた感じ。
    すごいホンだなあ。
    モルヒネさえあればハイ・ライフ!
    次の銀行強盗に失敗しても、ハイ・ライフ!



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    2025/02/11 00:04

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