実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/02/07 (金) 14:00
座席1階
今回は、政治家の妻たちの物語。男性俳優は1人もおらず、9人全員が女性で、それぞれ国会議員や県議、市議の妻(立候補予定も含む)という役柄だ。このような切り口での舞台はなかなかなく、期待して座・高円寺へ出かけた。
まず、座・高円寺の客席を円形舞台を囲むようにして配置したところがおもしろい。なくなってしまった青山円形劇場を思い出すが、あの劇場のような完全な円ではない。ステージの下に照明を配置するなど、これまでのJACROWとは異なる趣だ。
異なると言えば、全員女性という舞台も推測だが初めてなのではないか。冒頭の滝行の場面は、中村ノブアキ自身が「当選祈願のため行ったと取材で聞いて驚愕した」と言うように、結構強烈なオープニングだ。
物語は、市役所を辞めて次の市議選に出ると夫が言い出した妻が猛反対するところから始まる。しかし、義母や義理の姉と話すうちにとりあえずは先輩議員の妻に話を聞いてみようと、県議の妻を訪ねる。だんだんその気も芽生えてきて、ええぃとばかりに夫を支えることを決意する。
選挙戦では「内助の功」がよく言われる。特に保守系陣営では夫婦が二人三脚で遊説や演説をすることは珍しくなく、今作でも自民党を揶揄した「民自党」からの出馬ということで、県議の妻が選挙に臨む姿勢・心構えなどを指南する場面が出てくる。
また、国会議員、県議、市議という縦社会の構造がその妻にも及んでいることが、この物語の柱となっている。民自党議員の妻の会合がこうしたヒエラルヒーの場として描かれていて、このあたりもよく取材されているなと思った。
政治家は、選挙に落ちればただの人、しかも無職になってしまう危険もある。物語の終盤では、現実の政治のように裏金問題の逆風を受け、明暗が描かれている。最近問題になっているSNSでの炎上とかも取り上げられていて、なるほど身近なストーリーとして受け入れられる。
政治家の妻たちを描く物語だが、一部はその夫、すなわち議員を男性俳優を用いて登場させてもよかったのではないか。特に冒頭の市役所を辞職して市議選に出るという夫は、夫婦として重要な会話が展開されるのだから、俳優をあててもよかったと思う。トークバトルはJACOWの得意分野。男性俳優がいたら面白いだろうな、と感じた場面はほかにもあった。最初から全員女性と決めていたのかもしれないが、少しもったいない気もした。