おばぁとラッパのサンマ裁判 公演情報 トム・プロジェクト「おばぁとラッパのサンマ裁判」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    沖縄が、まだアメリカから返還される前の 1960年代が舞台。物語は、サンマに関税が課され価格が高騰することに反対した大衆運動。時代背景の妙、そして現代でも地続きの課題・問題として関心を惹く。日本にとって、沖縄の返還は重要な出来事だが、未だに沖縄におけるアメリカ軍基地問題は解決していない。基地の負担や環境問題、そして一番重要だと思われるのは、沖縄住民の声が反映されていないこと ではないか。

    公演は 分かり易い内容で、それをテンポよく展開していく。何より役者陣の演技(台詞回し)が小気味よい。庶民が口にする食材 サンマ、その身近さが現代の物価高騰をも連想し切実になる。その戦う相手がアメリカ、しかも相手が定めたルール(法)に則って争う。それ(困難)をいかに論破するのか。大衆運動を扇動するような熱い演技、その漲る力強さ 高揚感溢れるシーンが なぜか清々しい。

    脚本 古川健 氏と演出 日澤雄介 氏、この劇団チョコレートケーキ コンビの公演は面白い。アメリカは姿を現さないが、その見えない影の存在として米軍機の飛行音を轟かす。少しネタバレするが、物語は 大衆魚サンマへの不当な関税撤廃から 未来を守る戦いへ…ここに公演の真のテーマ<民主主義の希求>が浮かび上がる。
    (上演時間1時間40分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手に平板の壁、その前にウシおばぁの家。下手も同じような平板の壁だが、その前は弁護士事務所で机、ソファとテーブル。中央は金網で上部は鉄線のようなもの。その前は階段状になっており奥へ抜ける。

    1960年代、まだ沖縄が返還される前の話。アメリカが、サンマに関税を課すという暴挙、それに憤ったおばぁが敢然と立ち向かうが…。文字も読めないおばぁの無茶な奮闘記だが、それには知恵者や仲間が必要。その知恵者=弁護士が法に基づいて裁判所に提訴する。その法そのものがアメリカが定めたもの。関税する品目の定め(法)は、限定列挙で「サンマ」は記載されていなかった。それでも関税するとは如何なものか。そして裁判権そのものが日本に無いという問題。当時の不平等はもちろん不平不満を点描することで、問題の広がりや根深さを浮き彫りにする。

    裁判結果(判決)は、勝利し過去の課税分も返還された。しかし、それはウシおばぁ家に限ったことで、今後は課税品目にサンマを加えるという暴挙。あばぁにとって「商売」「お金」は大切だが、それ以上でも以下でもない。しかし、目先の現実主事から「未来を守る」という思いへ変化していく。それは姪に子供が生まれ、その子が安心/安全な暮らしが出来るようにとの思いを巡らせたから。物語は、裁判の成り行きを おばぁ(柴田理恵サン)が語りとして説明するから分かり易い。

    アメリカ相手に抗議行動、それが大衆運動としてプラカードやシュプレヒコールといった演出で盛り上げる。その高揚感溢れる思いが、清々しくそして痛快に感じられる。勿論、米軍機であろう轟音が響き、威嚇するような怖さもあるが、それを乗り越えなければ 沖縄の未来はないと。その誇りとしての沖縄民謡が米軍機音を凌駕するように流れた ように思えた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/02/05 00:06

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