おばぁとラッパのサンマ裁判 公演情報 おばぁとラッパのサンマ裁判」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    トムプロジェクトは昨秋久々に目にしたが、せせこましい時世をチクリとやる喜劇、舞台では初見の大和田獏の鷹揚な風情も芝居に合っていた。
    その点今作では、柴田理恵のおばぁ役からして喜劇の作りとは言え、太川陽介共々、芝居を自分に寄せ過ぎ?の嫌いあり。
    大和田氏(娘の友達の父、実は判事)は仕草が押し並べて主役の間合い(もしや台詞の出が遅いのを芝居にしちゃってる?)、太川氏(おばぁが相談に行く弁護士兼議員)は逆に脇役に寄り過ぎ(おちゃらけ風)、もっと草臥れたリアルな中年の深みを湛えていたかった。
    そういった役人物の形象の点ではやや淋しい思いがしたが物語は面白かった。

    米国統治下の沖縄で、庶民の食卓に並ぶささやかなおかずのさんまに掛けられていた関税が取り払われ、本土の身内から魚を輸入しているおばぁはウハウハ。ところがそこへ関税復活の報が入り、おばぁは立ち上がる。自分の儲け、もとい自分たち家族の生活を守るためだ。関税が無ければ安く売る事ができ、沖縄の家庭の食卓にはお魚が出る。その魚を売ってる自分らも、勿論儲かる事は嬉しいが、何より誇らしい。お客の顔が見えている。商売というものの原点に思いを馳せる。
    時代は米国支配下の沖縄と古いが、自治政府の上に君臨するギャラウェイによる関税復活と、庶民・中小いじめの税制を断行する今の財務省(の影響下の政府)が、冒頭の展開でいきなり重なる。
    庶民は庶民で頑張っている、それをネコババして自分らの私腹を肥やす支配者という構図が明瞭だ。
    願わくは劇中において税というものの本質、正当性の議論が、今に重なる形で展開しないかと最初期待したのだが、焦点は外国支配の不当性に・・それは当然そうなるっきゃない。
    ただ、お決まりの正義論に収斂する事の懸念は、それを唱える側が人間的にも無垢で汚れがないという描写に流れがちな事。もっとも本作はおばぁも弁護士も判事も「打算もあれば葛藤もある人間」として戯曲にはっきり書き込まれてあるのだが、演技上そこがさしたる壁になっていない。乗り越える事が決まってるドラマの進行上、ちょっと停滞してみせなきゃ、くらいに私には見えてしまい、ドラマの起伏が乏しく映った(要は予定調和)。
    また演技論に戻ってしまいそうだが、自分の好みについては今日はこのへんで。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    このところ世界中が関税発言に振り回されている中、時代や規模の違いこそあれ本作も「関税」がテーマ
    政治問題を扱っているとはいえ お茶の間的な性格も有しているので、親近感をもって観る事ができました
    魚屋の柴田理恵さんと弁護士の太川陽介さんのゲス笑いに観ているこちらも思わずつられて笑ってしまいますが、人として何を望むべきなのか、段々と見る目が変わっていき・・・
    沖縄の陽気さと、理不尽を何度でも打ち返そうとするエネルギーに敬意を表したいと思う公演でした

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/02/06 (木)

    サンマ裁判 聞いたことがありませんでした。
    アフタートークもあり、トム・プロジェクトと日澤&古川コンビの想いを聞くことが出来て「なるほど!」とうなずきました。
    柴田理恵さんが「おばぁ」にぴったりで笑って、しかも応援したくなりました。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    いまや、チョコレートケーキは作・古川健、演出・日澤雄介のコンビで、現在の硬派現代劇の代表選手になったが、一方でトムプロジェクトが支えるプロジェクト作品では、かなり大衆的な味付けで現代劇の制作を続けている。両者の関係は外からはうかがい知れない企業秘密なのだろうが、大劇団だって、本公演と、地方巡業作品や児童向け学校向けがあるのだから、演劇で生きていくためには必要な営業手法なのかも知れない。
    それにしては、この作品は沖縄問題真っ正面だから、どうなっているのだろうかと見物に行った。かねて見立てていたとおり、この「トムプロジェクト・作品」はチョコレートケーキとはかなり肌合いが違う。共通の課題の沖縄問題では数年前の「ガマ」とは違うタッチである。こちらは小劇場出身とは言え、もう誰でも知っているベテラン女優の柴田理恵が、おなじみのキャラで沖縄の糸満の初老の魚売りを演じる。生活を守るために目先の利益だけが確かな当てだと言いながら地元の弁護士のセンセイ(太川陽介)と組み、ついには地元の裁判所の判事とくんで占領軍政部に一泡吹かす。戦後の沖縄返還が成立する前の60年代の実話がベースになっている。
    沖縄の反米、反政府問題のベースになりそうな話を基に、島の生活に埋まっていた地元のサンマにかけられた関税問題を地元の生活と支配者という関係の中であぶり出す。1時間40分。親しみやすい語り口で、チョコレートケーキの素材にもなりそうな話ながらこちらは軟派である。なるほど、内容だけでなく客層もこういう割り振りで制作しているのかと解った。キャストでは柴田、太川、大和田はテレビでも顔なじみ、五人のキャストでもよくわかるように本はよくできている。残念なのは、この事件70年ほどまえの実話で、今の沖縄問題の原点でつながるところがあるとは言えるものの寓話的に見えてしまう。そこもトムプロジェクトの狙いかも知れない。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    沖縄が、まだアメリカから返還される前の 1960年代が舞台。物語は、サンマに関税が課され価格が高騰することに反対した大衆運動。時代背景の妙、そして現代でも地続きの課題・問題として関心を惹く。日本にとって、沖縄の返還は重要な出来事だが、未だに沖縄におけるアメリカ軍基地問題は解決していない。基地の負担や環境問題、そして一番重要だと思われるのは、沖縄住民の声が反映されていないこと ではないか。

    公演は 分かり易い内容で、それをテンポよく展開していく。何より役者陣の演技(台詞回し)が小気味よい。庶民が口にする食材 サンマ、その身近さが現代の物価高騰をも連想し切実になる。その戦う相手がアメリカ、しかも相手が定めたルール(法)に則って争う。それ(困難)をいかに論破するのか。大衆運動を扇動するような熱い演技、その漲る力強さ 高揚感溢れるシーンが なぜか清々しい。

    脚本 古川健 氏と演出 日澤雄介 氏、この劇団チョコレートケーキ コンビの公演は面白い。アメリカは姿を現さないが、その見えない影の存在として米軍機の飛行音を轟かす。少しネタバレするが、物語は 大衆魚サンマへの不当な関税撤廃から 未来を守る戦いへ…ここに公演の真のテーマ<民主主義の希求>が浮かび上がる。
    (上演時間1時間40分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手に平板の壁、その前にウシおばぁの家。下手も同じような平板の壁だが、その前は弁護士事務所で机、ソファとテーブル。中央は金網で上部は鉄線のようなもの。その前は階段状になっており奥へ抜ける。

    1960年代、まだ沖縄が返還される前の話。アメリカが、サンマに関税を課すという暴挙、それに憤ったおばぁが敢然と立ち向かうが…。文字も読めないおばぁの無茶な奮闘記だが、それには知恵者や仲間が必要。その知恵者=弁護士が法に基づいて裁判所に提訴する。その法そのものがアメリカが定めたもの。関税する品目の定め(法)は、限定列挙で「サンマ」は記載されていなかった。それでも関税するとは如何なものか。そして裁判権そのものが日本に無いという問題。当時の不平等はもちろん不平不満を点描することで、問題の広がりや根深さを浮き彫りにする。

    裁判結果(判決)は、勝利し過去の課税分も返還された。しかし、それはウシおばぁ家に限ったことで、今後は課税品目にサンマを加えるという暴挙。あばぁにとって「商売」「お金」は大切だが、それ以上でも以下でもない。しかし、目先の現実主事から「未来を守る」という思いへ変化していく。それは姪に子供が生まれ、その子が安心/安全な暮らしが出来るようにとの思いを巡らせたから。物語は、裁判の成り行きを おばぁ(柴田理恵サン)が語りとして説明するから分かり易い。

    アメリカ相手に抗議行動、それが大衆運動としてプラカードやシュプレヒコールといった演出で盛り上げる。その高揚感溢れる思いが、清々しくそして痛快に感じられる。勿論、米軍機であろう轟音が響き、威嚇するような怖さもあるが、それを乗り越えなければ 沖縄の未来はないと。その誇りとしての沖縄民謡が米軍機音を凌駕するように流れた ように思えた。
    次回公演も楽しみにしております。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    2月4日鑑賞。沖縄にこんな闘いがあったなんて、改めて沖縄のいたたまれない過去と、その中でも逞しく明るい沖縄の人達の姿に勇気づけられた感じがしました。この度、鶴屋南北戯曲賞を受賞した古川健氏と劇団チョコレートケーキの演出家日澤雄介氏の最強コンビで、個性あふれる俳優陣が活き活きと舞台を創り上げていました。柴田さん、太川さん、大和田さん、あまり舞台人としてはなじみがなかった人たちが自然体で演じているのが印象的でした。それに唐組に居た鳥山さん、若手の森川さんも上手くマッチして好感度を持てるキャスティングだったと思います。


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