トップ・ガールズ 公演情報 犬猫会「トップ・ガールズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    キャリル・チャーチル代表作を新訳(常田景子)にて上演。
    一人のキャリアウーマン・マーリーンの役員昇進を祝うべく集ったのは家族でも友人でも同僚でもなく、歴史や芸術の中に姿や名を残した女性たち。時空を越えた女たちが語る「わたしたちはどう生きたかトーク」はまさに弾丸の如し。誰もが誰の話も聞いておらず、「あるある」と思わず笑ってしまうのだけど、その混沌が生き方の異なる姉妹の物語に接続し、二人を隔てる「分かり合えなさ」に着地した時、本作の鋭利な核心をぐさりと突きつけられた。
    (以下ネタバレBOXへ)

    ネタバレBOX

    早くに妊娠したものの子を姉に託して都市でキャリアを築く妹とその娘と老いた母のケアを田舎で夫に裏切られながら一人背負うことになった姉。そのやりとりにはシスターフッドとは程遠い、女性と女性の間にもたしかにある対立や分断を感じざるをえない。
    社会で活躍する女性と家を守ることに徹した女性を巡る軋轢は朝ドラ『虎に翼』でも描かれていたけれど、本作では家事や育児のみではなく、ケアラーである姉の苦悩が色濃く描かれており、その中心にケアをされる立場である発達障害を抱える娘の存在がある。家の外(=社会)からは見えづらい、しかし喫緊の諸問題が家の中に積み上がっていること、「トップ」に立つ者の背後に隠されている者の姿にはやはり現代の様相が、2025年の日本でも解決しきれぬ問題が映写されている様にも思う。

    隣人を掻き消すほど声の大きな女たちの弾丸トークではじまったこの作品が、声をあげる力すら奪われた女性たちの声ならぬ声をひろいあげる作品であったこと。そう感じられる上演であったことが大きな意味を持っているのではなかろうか。戯曲の中で手をとりあえなかった女性たちの物語を、今後私たちの生きる世界でどう編み直し、再生していけるだろうか。そういうことを問われているような気もした。
    女性の生きづらさやその怒りを描くときに、二項対立として家父長制や有害な男らしさが配置された結果、物語のクライマックスやカタルシスとして女性と女性が安易に手を繋がされることも多いけれど、決してそうでないところ/そうはいかないところに真実が宿っている様に感じた。同時に、インナー姿で登場した俳優が舞台上で衣裳をまとう冒頭には社会で生きるために女性が装わざるをえない様々も忍ばされていたように思う。

    もはや「実録・時空横断弾丸トークバラエティ!」と銘打って深夜番組化してほしい位に面白かった怒涛のしゃべくりはじめ、俳優一人ひとりの迫力と説得力は圧巻。
    ラストの石村みかさんと名越志保さんの両者譲らぬバトルでは思わず前のめりに。見逃さずにすんでよかったです。

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    2025/02/04 16:32

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