実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
「家族とは」という普遍的だが 当たり前すぎるテーマ、そこに「何か違和感」という興味を惹かせる。もっともこの違和感は、例えば 宮部みゆきの小説「理由」の設定でも用いられており、(ミステリー)小説ほどの牽引力はない。ただ 家族の強い結び付き といった先入観から一歩引いて俯瞰することで見え、考えさせるところが上手い。
家族の物語は、その家族の数だけ物語があると言える。公演は、その一形態を描いており、むしろ優しく心温まる、そして居心地の良い場所なのかも知れない。古くて新しい家族をテーマにした公演、何となく小津安二郎の古き良き時代の映画を彷彿とさせる。その小津映画は映画館で再上映しており、時代が変わっても色褪せることなく楽しませている。本公演も同じような味わいが続くかもしれない。
舞台美術は劇団員が作ったらしいが、神は細部に宿る というが本当に住めそうな造作。そこで巻き起こる騒動、典型的なスラップスティック・コメディとして描いており、分かり易く楽しめる。前半の小笑い・大笑い・失笑など笑劇といった観せ方から、中盤以降は この家族一人ひとりの事情や問題を点描していく。この家族に凝縮した諸課題は、多くの問題提起をしているよう。緩い雰囲気の中で強かな物語を構築している。そして説明にある、何故 結が直人の家族に会いたいといったのか、その理由と激白によって物語が引き締まる。「笑劇」から刺激ならぬ「刺劇」になっていく変化、その印象付けが巧い。
(上演時間1時間35分 休憩なし)【湯のみチーム】