実演鑑賞
満足度★★★★★
直前に観劇を思い立ったものの本多は後方が厳しかったなと些か逡巡。しかし宣した以上は観るべしと足を運んだ。顔は判然とせずとも芝居はよく届いた。歌の比重が高く、ヘッドセットのマイクのためか誰が喋っているか探す場面が多々(自分が喋ってるという芝居してちょ、と内心こぼす)。
戦時下の日本や戦後の幾つかの時期を、説明抜きに行き来する3◯◯ならではのカオス演劇。中心となる女性たち(同潤会アパートの住人たち)は縁りの女優か、知らぬ名もあるが演技が「届く」面々。全体としてアンサンブルも含め華やぎ賑やかしい出演陣が舞台を埋め、群像たちの個体識別は未完に終わったが、様々な「喪失」の悲哀の重層低音を響かせる3時間近いドラマは「再会と獲得」を暗喩するラストで締め括られた。何のかの言って最後には渡辺えり氏がこの機に再演に付した思いが切々と迫って来るのであった。