実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/01/23 (木) 19:30
『アンナの銀河』のタイトルやあらすじを読んだ感じだと、藤子F不二雄のSF(少し不思議)な漫画の話とかのパロディ的なSFコメディ劇と思って期待して観に行った。途中劇中にはっきり出てこない星人が優生思想で人間を研究対象で下等に見ているのがナチスを彷彿とさせる。
さらにシェルターでアンナと他の家族が生活する。共同で隠れてシェルターで生活するが途中で大人同士のイザコザが起きたり、不倫が起きたりし、実験用ペットとして15年間シェルター外の入れ物の外から観察してきた星人が痺れを切らせて未知のウィルスを食べ物を作り出す機械の中に混入し、アンナ以外全滅するが、アンナだけ生き残り、引き続き観察が続けられる。といった在り方が『アンネの日記』を書いていたアンネとその一家が密告されて、ナチスに捕まり、アンネは病気で亡くなるという事実と偶然かもしれないが酷似して(厳密なやり方は違うものの)重なる部分が多くて、ちゃんと劇作家·演出の人は『アンネの日記』を読み込んで、アンネフランクに関わる文献を徹底的に調べ上げた上で書いて上演しているなと感じ、感心してしまった。
それまでのけいかではハラハラドキドキ心配になり、時に戦慄さえ感じて、終始緊張しっぱなしで、時々笑える場面も多々ありつつも、劇の進行から片時も眼が離せなかったが、終わり方が『アンネの日記』を換骨奪胎した上にアンナが救われるということで、安心して胸をなでおろすことができた。
アンナが劇中書く日記をアンナ自身が独白で読み上げる形式が普通の劇より説明的な感じがやや否めないものの、それが逆に新鮮で特徴的。アンネフランクの生涯は劇にもたくさんなっていると思うが、『アンネの日記』をアンネが独白形式で読む説明感強めでありつつの群像劇で、要所要所の重要な山場の場面さえ押さえれば、観客が劇に引き込まれつつ、最後にお涙頂戴的なことでなく、無理なく感動して、自然と涙が出てこれる演出方法で、本当の『アンネの日記』の劇化の際に参考になるんじゃないかと考えた。もちろん説明的すぎるのも良くないと思うので、適度なバランスは大事だと思うが。
『アンネの日記』における性的描写やアンネが明るくお喋りで落ち着きがないが無邪気でありつつませていて、段々日記を書く中盤頃から思春期なのを意識し始めたりする、アンネがよくその辺にいる普通の女の子だといったエピソードがあるが、『アンナの銀河』においても似たようなエピソードをちょこちょこ挟む劇作家·演出の人の妙な忠実ぶりには感慨深かった。