6回の表を終わって7-0と苦しい展開が続いております(仮) 公演情報 坂田足立連続デッドボール「6回の表を終わって7-0と苦しい展開が続いております(仮)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。
    中年男性への密かな応援歌といった物語。タイトルは人生の3分の2(野球で言えば6回ぐらいか)ほど過ぎた中年男の現状を表しているような。舞台は銭湯、その名も招湯。そこへ来る常連客の愚痴、ぼやき、嘆きといった不平不満を笑いと悲哀で綴る。物語は悶々とした胸の内を曝け出すが、実際に行動を起こすかと言えば 二の足を踏む。見所は、その圧倒的な演技力。

    まだ何者にもなれない中年男たち、無為に歳月だけが過ぎていくが、それでもよし といった惰性・諦念といった気持もある。ところが或る出来事によって心境の変化がおきる。まずは、草野球チームを作って という前向きな姿勢になること。もう一つが、常連客の1人が夢を叶えようとしていること。この男が 夢から一番遠そうに思えたが、努力は実を結ぶといった教訓じみたことが描かれる。

    公演は むさい男=オッサンが「銭湯」と「サウナ」で語る くたびれた話が中心だが、劇中のキャッチボールのシーンは躍動感と迫力がある。なお オッサンたちの背景は 敢えて深追いせず、今の状況を淡々と描く。そこに身近にいるオッサンたちのリアルが立ち上がる。他愛ない会話の中に納得と共感を誘うような。ぜひ劇場で。
    (上演時間1時間55分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は、上手に脱衣所、そこにロッカーや冷蔵庫等、下手にサウナ室があるが直接行き来はしない。上手の暖簾が湯舟やサウナへ通じる入口。また銭湯の出入口近くにマッサージ機を置き雰囲気を漂わせている。

    登場人物は6人、銭湯の主人 マスター、常連客の先生・オサム・岡・ユージ・戸塚と素っ気ない名前で、ほぼ今ある姿だけで物語を紡ぐ。そして夫々の会話から関係性や付き合いの長さが何となく分かってくる。常連客の先生は小説家、それも官能小説を執筆しているらしい。オサムは広島出身 独身でバイト暮らし。いい歳をして まだ母親に金を無心している。岡、何かを喋ろうとすると他の誰かが口をはさむ。その正体は最後まで謎のまま。ユージは地元のようで野球愛に溢れ草野球チームを率いている。戸塚は刑務所帰りの元ヤクザ、背中一面に刺青。ほとんど女性に係る話題はなかったが、マスターが婚活を始め、好感度を上げる対策を練る。面白可笑しい会話が次々と…。

    話題と言えば野球、それ以外は他愛ないことばかりだが、不思議と現実感がある。マスターの婚活も スケベ心は勿論だが、将来の一人暮らしが心配といった悲哀も滲み出る。毎日明るく元気に過ごすこと、そんな日々に満足しているようだが、いつかは達成感めいたものが欲しい。先生曰くまだ本気を出していない。自分の実力はこんなものではない と言わんばかりだ。そんな中、戸塚が俳優オーディションに通った。それが何とアメリカ(ハリウッドか?)というから皆驚き。端役と思っていたが主役、それもヤクザ映画だから素で出来る。

    年齢的に 何かを成し遂げようとするのは難しい、そんな躊躇する気持がどこかある。それでも大声を出し明るく元気、その第一歩が草野球で勝つこと。しかし世の中そんなに甘くはなく連戦連敗で意気消沈しそうになるが…。50歳になろうとする男たちが足掻く姿、それは惨めというよりは開き直りの清々しさを感じる。それがタイトルの最後にある(仮)、つまり苦しいが まだ(人生は)ゲームセットではない。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/01/25 07:04

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