アンナの銀河 公演情報 演劇集団nohup「アンナの銀河」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    SF仕立てにした人間観察劇といったところ。物語は二重構造<宇宙船の内と外>、さらに云十年に及ぶ時間軸を時系列に描く。一見 複雑そうに思えたが、プロローグとエピローグのような描き方で違いを表す。内容的には、人間の喜怒哀楽や冠婚葬祭に準えたイベントを展開し、人の在り様を洞察する。そうせざるを得ない状況を作り出し、さらに そこから抜け出せない半ば強制的な環境を巧みに設定する。その柔軟な奇知が物語に深みと味わいをもたらしている。

    シンプルな舞台装置、それゆえ役者陣の演技力が問われるところだが、しっかり感情表現をしていた。個々人のキャラクターを立ち上げ、ありがちな人間関係(家族内や隣人家など)を上手く描いていた。シリアスでありコメディなシーンといった硬軟ある観せ方は観客を飽きさせない。

    地球人が、異星人から高度な科学(兵器)技術を背景に 理不尽な要求を迫られる。その高圧的な相手が異星人というところが肝、個人的には「アンネの日記」「幕末の黒船来航」そして「拉致」といった深刻な状況を連想した。究極の進路選択を迫られた時、人はどのような判断・対処をするのか。そして独りになった場合は…舞台という虚構(世界)の中で しっかり考えさせる。
    (上演時間1時間25分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、正面壁際に六角柱の椅子が7つ横並び、そして同形のものが舞台中央に1つ の計8つ。舞台と客席の間に折畳み椅子が3つ、というシンプルなもの。

    木ノ川家は両親と姉・弟の4人家族、ゴライ家は両親と娘の3人家族の計7人が宇宙船で暮らす。後に、セパクという老人が 子供の教育係として同居し8人になる。宇宙船の外の人間は、異星人によって拉致されシェルターへ収容されているらしい。一方 決まった作業の繰り返し、その刺激の無さが だんだんと人の感情を蝕んでいく。平穏に暮らせる喜び、しかし 悪意はないが欲求するという感情は制御できず些細なことで怒る。そして宇宙船という小さい空間(世界)の中で、反抗期(13歳)を自我の成長と諭し、異性への恋愛感情を育み結婚、そして人の死、といった人生イベントを順々に描く。

    長い年月を狭い空間に籠り、何の変化もない暮らしによって生まれる閉塞感や倦怠感。しかし外に出れば生命の危機といった八方塞がりの苛立ち。それは外から観察してきた星人にとっても同様で、食料にウィルス(毒)を少しずつ混入し、アンナ以外は全員亡くなる。1人になったアンナは孤独と戦うため日記を書きだす。この状況は、父と異星人が交渉した結果である。人の命と人生とは を問うー単に生きることが必要なのか、それとも存在意義ー生き甲斐のようなものを求めるのか。そんな根本的なことを考えさせる。

    完全に孤独になったアンネが発狂もせず、以降も淡々と暮らしながらも希望を失わない。考えてみれば恐ろしいこと、誰とも話をせず 対話するのが自分だけ。その確固たる意思はどこからくるのだろうか。物語はシリアスとコメディ、そのバランスがよくラストも悲劇に追い込まない。このシェルター以外の様子や状況は解らないが、人智によって希望が持てるような。そこに銀河(宇宙)に1人取り残されたアンネの救いをみる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2025/01/24 22:23

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