実演鑑賞
満足度★★★
この作者は時にキワモノにも手を出す。このドラマは性行為そのものを主題にしているが、それを芝居で上演するには表面的ながら、社会的制約もある。ウラでは、ジツエンでも映像でも、書物でも(ストリップ、成人映画、官能小説)公開されているし、文芸では表向きでもいくつもの作品が文芸名作として発表されているし、若者にも青春まっただ中小説が散々書かれている。未知の世界ではないが、そこに新しい基準が持ち込まれた。
世間では、ハラスメントが話題にされていて、その観点から性行為も俎上に上がる。個人的には性行為がトラウマになっていることをおおっぴらに話題にしにくい。性行為入りの映画も芝居も盛んに制作されるが、正面からは扱いにくい。そこをスエーデンでは了解がない(相手がイエスと言わなかった)性行為は犯罪行為だと言うことになったがどうか、と設定したドラマである。こうなれば、被害者は女性側であるが、そればかりでもない。しかし、現実には女性側に被害が深刻で、現にこの芝居でも、男性客にはしらけているのもいたが、嗚咽をこらえられない女性客の声もあった。個々のケースに踏み込むにはデータが安易だ。
結果的には今盛んに作られるようになった討論素材ドラマ(結論の見えているディスカション・ドラマではない)であるが、登場人物の生活感が乏しいこと、人間関係に性だけでなく人間表現が乏しいこと、はドラマとしては欠けるところでこれでは同情は呼べても討論は深まらない。キワモノの難しい素材である。1時間45分。