荒野に咲け 公演情報 劇団桟敷童子「荒野に咲け」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    時代を反映してか、(イキウメ前川氏程でないが)桟敷童子東氏の戯曲も、ある時期から無慈悲な冷酷な現実を映し出す場面を含む作品が散見される。「エトランゼ」を思い出す。貧困の再生産という事が言われるが、言語が示す「平均的」イメージはそれとして、本作では「頭が悪い一家」と、その自意識からのひずみが家族を病ませて行く「パターン」を描出している。
    病的な被害妄想を楽観的に変えようとしない母孝子(板垣)、家出したその娘香苗(大手)、彼女が発見された後面倒見がてら雇われる事になる親戚の営む食堂(仕出しもやっている地元の老舗会社)で彼女の面倒を見る事になる恵子姉さん(増田)、毎度のお婆役だが今回は最も時代に乗り自由を謳歌し、どん詰まりの所で香苗を救う事になるヒサ(鈴木)、今回はこの四女優の形象が優れていた。普段とは違った役柄というか佇まいの親戚の叔母二人(川崎、もり)も良かった。男優はそれぞれ役としての存在感を持ちながらもアンサンブルに徹し、女優を光らせていた、という印象が強い。
    無惨で悲惨な日本のどこかに今もあっておかしくない現実を、目を見開いて凝視させる筆力、役者力、アンサンブル、微細な伏線を大きな変化に繋げる技も見事。装置を駆使したクライマックスをラストでなく少し手前に持って来て、ファンタジックな場面を介して小さな光あるエンディングへ誘う。この場面に登場するアイテムは「現実」の峻厳さに見合う迫力を備え、必見である。

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    2024/12/24 02:21

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