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病室
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劇団普通「
病室
」の観てきた!クチコミとコメント
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Yuichi Fukazawa(75)
実演鑑賞
満足度
★★★
「会話の反復が紡ぐ生々しい寓話」
ネタバレBOX
山と畑に囲まれた脳神経外科専門病院の一室に4人の患者が入院している。救急車で搬送されてきた片岡(武谷公雄)を見舞う妻(松本みゆき)と娘のあみ(上田遥)のところへ、車椅子で近寄った同室の佐竹(用松亮)は根掘り葉掘り質問を浴びせ喧しい。2週間で退院できる片岡とは異なり、下肢が麻痺している佐竹はがんも患っているそうだ。佐竹の隣のベッドの小林(渡辺裕也)も片岡一家に興味津々だが、内気な性格のようで佐竹越しに片岡への質問を投げかけて要領を得ない。もう一人の患者である橋本(浅井浩介)はベッドに横たわったままだ。
劇が進むにつれて患者たちの背景が浮び上がってくる。度重なる発作に見舞われてきた片岡は、家族に促されなければ担当医師(浅井浩介・二役)に治療方針の変更を言い出せないほど物静かだが、息子の広也(重岡漠)に「お前は病気の俺の面倒を見ろ」と言い放っていた。橋本は娘(青柳美希)が夫のもとを離れ幼い子どもを二人連れ帰省していることに戸惑いを隠せない。家族と軋轢のあった小林は娘(上田遥・二役)くらいしか見舞いに来てくれないようだ。他人の事情にズケズケ入り込んでくる佐竹も、泣いてばかりの妻(石黒麻衣)に頭を抱えているようだ。やがて片岡が退院し、佐竹が転院する日がやってくるのだった。
効果音やBGMのない静かな空間で展開する何気ない会話の応酬に定評のある劇団普通の作風が、病院の相部屋での人間関係を描く本作では見事にハマっていた。誇張された台詞を極力廃し極めてリアルなやり取りの俳優の芝居とは異なり、舞台面に沿った天井の白枠や簡素なベッド、舞台奥の閉まったままのカーテンなど、美術は極めて抽象性が高い。いわば生々しい寓話ともいうべき独自の作風を成立させていた。ややパターン化しているようには見えたが、言葉の反復と噛み合わない論点がコミュニケーション不全を起こしている様子に会場からは度々微苦笑がこぼれていた。小津映画に出てくる笠智衆のように朴訥とした片岡を演じた武谷公雄、ギョロリとした目で声を張りあげる不躾さと、反面自身の病後や妻の嘆きに心を痛める佐竹を演じた用松亮の芝居が特に印象に残った。青柳美希と石黒麻衣が二役で演じた看護師による介助が芝居の流れを切り替える役割を担っていた。
他方で登場人物と家庭環境の描写が多く、説明的で散漫になった印象は否定できない。理学療法士の遠藤タケル(重岡漠・二役)と青柳美希演じる看護師の仕事終わりの逢引から、昼間病室で起きた出来事に外部の視点を入れるという企みもあまり効果を上げているようには思えなかった。いっそ病室の描写に絞ることで患者たちの会話から見えてくる病院という社会の仕組みを立ち上げていったほうが広がりがあったように思う。
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2024/12/17 08:21
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