実演鑑賞
満足度★★★★
説明では、「インターネットと家族。人と人との繋がり。関係性の下に拗らせていくディスコミュニケーション会話劇」とあり、家族でありながら対面で会話をすることが苦手 または出来ない家族関係を連想していたが、少し違った。たしかに出雲家という家族を描いているが、中心は その兄妹のモヤモヤとした不安や依存・他律など、表し難い心の葛藤を繊細に紡ぐ。 自分は何者なのか、何をしたいのか、アラサーになっても定職に就かず実家に住んでいる兄の悠太。一方、妹の環奈は家を出て見知らぬ男の家を転々としている。そして VTuber「丙栖てぃあ」として活動を始めた。
人物の関係性は早い段階で明らかになり、だんたんと性格や立場 おかれた家庭環境が深堀されていく。物語のテーマは「家族と VTuber」らしい。そして当日パンフの主宰 後関貴大 氏の挨拶文を読むと彼自身を投影しているような。物語の見所は、ありふれた家族物語…しかし家族とは、と突き詰めて問われた時に 即答することは難しい。色々な家族があり一概に言い表すことが出来ない。その漠然とした「家族」を、兄や妹そして父や母、さらに周りの人々を通して浮き彫りにしていく過程が面白い。ちなみに、出雲家だけではなく、登場人物たちの家族についても触れられ、そこに家族の多様性を描き出す。
前作「明けちまったな、夜。」も良かったが、既視感が否めなかった。今作もありふれた「家族」を取り上げているが、VTuberという第三者的というか俯瞰するような描き方が、内面を見詰めるという深み味わいを感じさせる。自分に言わせれば、出雲家は典型的な家族構成で他の登場人物の家族に比べれば恵まれている。単に不器用なだけ。その意味では家族というよりは自分探しの彷徨のような物語だ。
舞台美術、その色調と効果的な照明のバランスが実に巧い。配置等はネタバレに記すが、暗幕で囲い配置されているセットは白色。舞台全体がモノトーンのようで落ち着いた、というよりは沈んだような重苦しさを感じる。そこに登場人物の抱えた問題が垣間見えるような気がする。照明は薄暗いが、人物へのスポットライトを多用し 心情表現を豊かにしている。
(上演時間1時間45分 途中休憩なし)