いつかのもの語り。 公演情報 BB stage「いつかのもの語り。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    説明にある「こんにちは、僕はしがない図書館の管理人さ」、その僕に導かれた世界をファンタジー風に描いた物語。舞台美術はその世界の雰囲気を漂わせ、照明や音楽は効果的に物語を支えている。
    ラスト、或る人物が登場することで、さらにファンタジーなのか リアルかといった想像が膨らむといった巧さ。構成は凝り過ぎかと思ったが、登場人物の夫々の心情を分かり易く観せるための工夫のよう。

    物語は主人公を始め、悩み苦しんでいる人々の現在を見つめ、過去を顧み、そして未来を拓く、そんな滋味溢れる内容だ。物語としては面白い。ただ図書館という言葉から、静かに時が流れると思うのだが、編集者のキャラを濃く(騒がしく)し、敢えてデフォルメしたような人物造形は、抒情的な雰囲気にあわない。コメディリリーフといった存在でもないようだ。出来れば、もう少し落ち着いたキャラのほうが、全編を貫く雰囲気に合致する と思う。
    (上演時間1時間40分 途中休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央に両開きドア、左右に本棚が並ぶ。上手の一部が階段になっており その上り下りによって躍動感が生まれる。上演前から3人の人物が読書をしており、後々 物語に絡んでくる。舞台と客席の間に白い紙が…それが浮遊感を表す。物語の紡ぎと浮遊感ある雰囲気がファンタジーといった印象を与える。

    高校の同級生から書く才能があると言われ、発表した小説(処女作)が話題になり 一躍人気作家になる。編集者から次回作を促され、執筆した2作目は酷評され自信を失う。また高校の友人が自殺し、書くことが怖くなった主人公の心の彷徨であり咆哮でもある。目に見えない心の叫び、それを上演前に読書していた3人の物語(オムニバス風)に重ねる。書けなくなった幻の小説家、その書き手を探すファンによって解き明かされる謎(小説家の心情も含め)、それが物語の肝。小説家は男手ひとつで育てられる。第1:小説家は母の思い出がない。第2:心臓病の娘の母親、第3:(母)親に捨てられ、見ず知らずの爺に育てられた娘、この薄幸とも思える人物達が健気に、そして必死に生きようとしている。その小話を交錯するように紡ぎ、独特の世界観を描き出す。いずれも過去に向き合い、情愛の繋がりの大切さを説く。

    主人公に書くように勧めた女子高生が自殺する。それが彼の処女作が評価された後だけに嫉妬したのか、という読み筋になる。しかし劇中ではその理由を否定しており、彼にもっと書かせるといった励ましの行動だったような。この場面の解釈が難しく、モヤモヤとする。しかしラスト、自殺したはずの女子高生と図書館の管理人が登場する。亡くなった魂が現世を見守る、もしくは 物語全体が劇中劇であり、亡くなった女子高生が書いた小説といった捉え方も出来る。その意味でファンタジーかリアルなのかといった想像が膨らむ。

    舞台技術…音響・音楽は、図書館の入退室時に響くドア開閉の重厚な音、温かく優しい音色の音楽など効果的。照明は黄昏をイメージの落ち着き、白銀照明による淋しさが印象的だ。物語をしっかり支えた舞台美術と技術、それに好感をもった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/09/26 17:47

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