『ミネムラさん』 公演情報 劇壇ガルバ「『ミネムラさん』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    劇壇ガルバは山崎一が主宰する個人劇団で面白いプロデュースをする。集まった者の賛同さえ得られれば、何をやってもいいと言う自由さがある。主演者は峯村リエで、彼女を当てて三人の作者が短編を書く。当て書きをする。できあがった三編の短編は細川洋平「フメイの家」、笠木泉「世界一周サークルゲーム」、山崎元晴「眠い」。できあがったところで、三編を混ぜ合わせて(並べてではない)一本の作品をつくる。まとめ役は演出の文学座の西本由香(気がつけば今週は文学座女性演出家の三連投だ!)が一本にする。普通考えれば、こういう企画は大方の作者は嫌がる。上手くいくはずがないし、結局後味の悪いことになる。そこをよってたかって面白がりながら一本にしてしまったところがこの珍しい企画の手柄である。作者でもなく制作者でもない山崎一にしか出来ない芸である。
    テーマは「女性」で峯村リエに当てたわけではない(ことはないだろうが)が、演者が峯村リエになったので、ついでに?タイトルも「峯村さん」にした??ホントかどうかは解らないがパンフレットを読めばそういうことだ。現実に俳優としては、正体不明な魅力のある峯村リエがそういう芝居の主役を演じるところも良い。
    作者はそれぞれ一癖ある中年前期の世代の作者たちである。皆それぞれシーン作りが上手い。だが、最初から一本にしようという強い縛りはなかったようである。パンフレットを見れば、出来た後でどのようにバラバラにして、スジをつけて再構成したのか書いてある。やはり一本の作品としてはどこか、いびつな出来で、ファンタジーなのか、現代ホンネ女性ものなのか、フラつく。不条理劇の極みでもあるが、でも、こんな女いるよね、げんに峯村リエが演じると結構魅力的でもある。こうして「誰かであり、誰でもない」峯村さんができあがった。演出者はこのドラマは「不在」がテーマだと難しいことを言う。そういえば、最初、峯村さん宛に書かれ、郵便で送られた手紙は「宛先フメイ」で届かない。
    舞台の半ばを過ぎたあたりで、突然30年ほど時間が飛ぶ。ここが良い。このドラマに実際の時間がはいったことで、現実は過去と今のとの交差点であり、そこにしか人間は存在できないことを示すことが出来た。そこでミネムラさんが実在する、このあたりから、彼女の半生を彩ったさまざまな人々との過去は精彩を持ってロンド(輪舞)して現代のドラマになった。愉快な一夜のユニークなエンタテイメントでもあった。

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    2024/09/24 22:28

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