実演鑑賞
今年6月に観劇した『消しゴム山』に通じるコンセプチュアルな一作に感じられました。ロジカルかつ未来志向的な演劇実験作。この「実験(実証)」要素が、観客である受け手によって評価の分かれるところだと思います。当日パンフレットやホームページなどに記載されたテキストを読み、創作プロセスなどをある程度頭に入れた上で「…なるほど」と理解の手掛かりを得られる。その難解さが存在することは事実でしょう。ただ、モチーフとして描かれる物語はロジカルに構成され合点のいくものだし、俳優が紡ぎ出すシーンからも大いに刺激を受ける。今作は音楽劇なので、もちろん音楽そのものや、劇中での存在の仕方も興味深い。結果的に演劇的なカタルシスというか、観劇後の満足感が観客の心身にしっかり残る。難解だけどある意味明瞭でもある、でも一人で読み解き理解するのはハードルが高い。だからこそ誰かと語り合いたい作品と言えるかもしれません。
もうひとつイメージしたのは、近年の岡田さんの創作への興味・関心が、これからの社会基盤にフィットする「新しい価値規範」の模索にあるのではないか?ということ。短期間で解答を導き出せる取り組みではないからこそ、岡田さんの作品には常に実験が組み込まれていると感じます。