三ノ輪の三姉妹 公演情報 かるがも団地「三ノ輪の三姉妹」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「再び集う家族の物語」


     性格の違いが際立ちバラバラに暮らす三姉妹が、母の死をきっかけに再び集い、不器用ながらも絆を深めていく秀作である。

    ネタバレBOX

     物語は三ノ輪に住む箕輪家の次女苑子(冨岡英香)の語りから幕を開ける。丸の内のベンチャー企業に勤める苑子は子どものときから利発で成績がよく、ハラスメント気味な社長(宮野風紗音)と要領の悪い新入社員(村上弦)のあいだを取り持ったり、家庭のゴタゴタを調停する役割に長けている。仕事の傍ら余命3ヶ月と宣告された母の幹江(はぎわら水雨子)の見舞いを続けるなかで、いまは離れて暮らす姉妹や、離婚して出ていった父(藤田恭輔)と過ごした日々を回想する。

     自主性の強い末妹の茜(瀧口さくら)と内弁慶な長姉葉月(中島梓織)は子どもの頃から折り合いが悪く、両親が離婚してからはさらに拍車がかかったらしい。居酒屋で働いている茜は実家を出て北千住で一人暮らしをしており、彼氏の茶柱篤人(岡本セキユ)の同棲を計画している。かたや職を転々としてきた葉月は10年前に実家を出てしまい、家族に隠れ町屋で造園事務の仕事に就いていた。物語は姉妹それぞれを主に据えた章立てで進行していき、やがて三姉妹揃って死期が近いながらも屈託のない母の幹江に会いにゆくことになる。

     本作は台詞の秀逸さと流れるような展開のうまさが際立っている。あらすじだけ書けば深刻な話のようだが、随所にコミカルな仕掛けが入っていて飽きることがなかった。箕輪家のご近所さんで会ったそばから髪を切ろうとする美容師の徳永タエ子(柿原寛子)と、有名歌手と同姓同名であることをネタにしている兄の秀明(袖山駿)が、やがて三姉妹を再会させる契機を作るといった伏線も周到である。苑子の会社の社長にはじまり茜の勤める居酒屋の店長や葉月の親方、果てはコインランドリーまで演じ分けた宮野風紗音、気の弱い新入社員や幹江とギャグ合戦を繰り広げる看護師を担う村上弦の達者さも印象深い。

     他方で全体的に説明過多で、俳優の演技で感じたかった役の感情を台詞が説明しすぎるきらいがあったことも事実である。冒頭で苑子が家族の状況について観客に語りかけるところも丁寧であったが、やや喋り過ぎではなかったか。子ども時代の回想や不器用な葉月が職場で邪険に扱われる様子も描きこまれていたが、あえて描かず俳優の語りで観客に伝えるという手法も考えられただろう。母親に会いにいく場面のバスの乗車やマイムでコインランドリーを表現する場面など手数の多さには感心したが、もう少し狩り込んでみてもよかったのではないだろうか。

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    2024/09/08 16:08

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