あの瞳に透かされる 公演情報 Pカンパニー「あの瞳に透かされる」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    実在した表現の自由の事件を素材にした現代劇である。
    戦時の従軍慰安婦の写真展を、世間に批判を畏れて大会社が中止した。会社は責任を担当取締役(内田龍磨)一人にかぶせて左遷、地方に住まわせて、ほとぼりが冷めるのを待つ。そのいきさつを嗅ぎつけた運動家グループが、むしろ謝って公開した方が大会社に取っては利益になると、二枚舌平気の弁護士(磯谷誠)を派遣してくる。会社も二重構造なら社会の倫理もダブルスタンダードなのだ。
    現在の週刊誌的話題ではよくある構造で、どちら側にも現代ならではの問題構造に対して実にナサケナイとしか言いようのない正義がくっついている。
    しかし、今は身近なゴミ問題から世界的なロシアの侵攻問題まで、どこにもありがちの、昔風の正邪では裁ききれない問題を舞台で観客に見せるのは難しい。問題はそれぞれ弱みも持っている。多くのことに表裏の諸条件が複雑に絡み合っている現代をどう生きるかと言うテーマはかなり面白く演劇的でもある。しかし、この舞台では残念ながら設定にぼろが出すぎた。最後に、突然、主人公が田舎のフリマで天使の人形を集める、と言うことへテーマの解決を持っていっても無理がありすぎる。主筋の写真展の中身の従軍慰安婦問題や、会社内の内部抗争、まで、さまざまな立場の人間に役割を拡げすぎて整理されていない。この作者は関西の医師出身の劇作家で、過去にも東京で見たことがあるが、このようなとっ散らかり方はしていなかった。劇団として、はじめての作家との取組み方にも混乱の原因があったように思える上演だった。客席は満席だった。


    ネタバレBOX

    現実性の強い素材で、ここで現代の本質を掴もうとすると難しい、現実素材なのに嘘っぽい。先例では、中津留のトラッシュマスターが随分長い間苦労した。今は、こういう素材だと中津留が一枚も二枚も上手である。経験がものを言う。古川健も歴史を扱って上手い。勝負のハンイをそれぞれがよく知っているからだ。さらに言えば、俳優たちが従来の良い役、悪い役でやろうとしすぎている。そこはpカンパニーのような古い劇団の解釈癖だろう。演出者の責任でもある。民藝もどきで古い古い。

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    2024/09/05 22:54

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