Re: プレイバックpart3 公演情報 劇団チャリT企画「Re: プレイバックpart3」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     板上には古いアパートの一室が再現されている。センターよりやや上手にはこの部屋の入口ドアが斜めに設えられ、出るとホリゾント方面は筒抜けで役者の動きが丸見えになる。この空間を遮るように部屋の下手奥辺りに本棚に入れられた故人の書籍、アルバム、雑多な品々が見える。(本日楽日、追記9.2 4:12)

    ネタバレBOX


     物語はこの部屋で半年ほど前に亡くなって、つい最近発見された部屋の住人・タカセ マサヨシの遺品整理に甥のケンタと友人が遺品整理に訪れたある日の話だ。遺体は発見時既に白骨化しており、余程苦しんで亡くなったとみえ吐血したと思われる血に塗れた手で壁のあちこちに手形が付き、敷かれた布団の上で遺体から溶けるように流れ出た体液が床に染みを拵えていた。既に業者が入って部屋の除染や室内塵の撤去などは為されていたが、この作業中に唯一の親族である甥の居所が分かり大家が連絡を取ってケンタと友人が後片付けに来ていた訳である。
     ところでケンタも友人もリッチではない。そこで遺品の中で売れそうな物はなるべく高くオークションで売ってせめてレンタカーの費用程度は捻出したいと本棚に詰まった様々な品々を検品しているうちにカセットテープを発見した。遺言が録音されている可能性があることから再生してみることになり、大家が捨てずに持っていたプレーヤーを借りて再生してみることになった。
     するとそこには想像もしなかった内容が記録されていた。然しマサヨシの歌謡曲好きからかテープは片面4分程しか収録されない代物で、而も亡くなる前に体調を崩していた伯父の咳が録音を邪魔して居る為聞き取れた内容は半分程度、A面、B面合わせても肝心の部分は未録音のまま切れた。その内容は実に深刻なものであり、伯父はその任務を果たさねばならなかったことを悔いその任務の内実を明かそうとしていたのだ。その肝心要の部分が録音されていないのである。カセットプレーヤーを貸してくれた大家も古いラジカセが中々上手く作動しなかったこともあって部屋に来て何とかラジカセを作動させることに成功したばかりであったから成り行き上片付けに来た2人と共に居り、皆が皆何が録音されているのか何とか聞きたいと考えていた。然し埒が明かず大家は階下の自分の居室に戻った。友人は何か飲む物等を買いに部屋を出た。ケンタが独りで居た処へ若い夫婦が隣に引っ越して来たと挨拶に来て菓子折を置いていった。何気に開けてみると入っていたのはカセットテープ、それも皆が聴きたがった遺言のパート3であった。早速聴いてみるとそこには恐るべき事実が録音されていた。
     その事実とは、叔父が自衛隊員であったことと関係していた。既に人々の記憶からも半ば忘れかけられていた日本最大の犠牲者を出したとされる航空機事故として処理された事件に自衛隊員らが動員され、証拠隠滅の為に証拠となりそうな総ての物証を焼き払った任務に纏わる告発であった。事件からはワンジェネレーション以上の時が経ってはいたが、未だに関わった自衛隊員達の不可解な死や自死が多発していたことも伯父の同僚の自死を巡って訪ねて来た妹の話、霊となった伯父が語った自らの死因からも明らかになり事件がずっと生き永らえて関係者に重く圧し掛かっている実態が露わになる。
     話は前後するがこのテープ内容に被さるようにパート3のテープが入った菓子折を持って来た若夫婦が伯父を追いかけまわしていた理由が分かってくる。若夫婦、実はこの事件で墜落時には未だ生きていた被災者であり、他にも多くの被災者に助かる可能性があったことから、また片付けを手伝ってくれている友人の叔母が菓子折若夫婦の妻であることからの因縁で既に冥界の人となりながらマサヨシの霊は、若夫婦の霊たちに追われていたのである。
     ラスト直前、改めて伯父はケンタにテープは処分するよう忠告し、命に気を付けるよう告げる。2人が総ての片付けを終えて大家に挨拶しアパートを出た直後、人身事故が起こった音が聞こえる。答えは読者にも直ぐ想像できよう。
     そして世の中は何事も無かったように回ってゆく。一番怖ろしいことは、何事も無かったかの如く総てが隠蔽され人々は知らんぷりを決め込んでただ粛々とちまちました人生を送り続けるという事実だ。この事実は、ほら君の斜め横の薄暗がりで薄笑いを浮かべている。


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    2024/09/01 11:47

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