舞台「やむにやまれぬ蒼~150年後の、君へ」 公演情報 寺子屋プロジェクト「舞台「やむにやまれぬ蒼~150年後の、君へ」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。
    幕末の動乱劇にしては、派手な殺陣等のアクションシーンは少なく <志>を語るように紡いでいく。物語は、長州藩 吉田松陰の志を継いだ若者たちの迸る<思い>と 彼らを巡る女性たちの熱い<想い>、その両方の観点から描いているところが魅力的だ。男性だけ女性だけといった場面を取り入れ、その時代における男女の立場や役割を強調している、そこに心情が浮かび上がる。

    時代は幕末、それもペリー来航した1850年頃から1890年の大日本帝国憲法公布までの約40年間を描いた物語。150年程前の話であるが、現代にも通じることー1人ひとりが自ら考え行動するーそこには当然 責任も伴う。そんな覚悟を熱く語るシーンが多い。パンフにも失敗を恐れず進むことを止めず諦めなかった彼らを<志士>と記している。

    公演の特長は、踊り手2人が しなやかに舞うことによって場面転換を行い、生演奏で情況・状況の変化や雰囲気を効果的に盛り上げる。踊り手は、劇中の人物たちの衣裳(和装)と違い、現代的な それも華やかな色彩の物。そこに演出のメリハリをつけることによってトピック的な出来事を印象的に描き出す。脚本の山崎愛美さんが前説を担当し、時代劇が好きか嫌いか(端的に言えば明治維新に詳しいか)を観客に問うていたが、たとえ疎くても本公演は楽しめる。
    (上演時間2時間50分 途中休憩10分 *カーテンコール含めると3時間超) 

    ネタバレBOX

    下手から上手にかけて段々と高くなる段差ある横台。その前後ー前(客席側)が演技スペース、横台の後が生演奏(4人)を行うスペース。公演の特徴は、演奏(キーボード、バイオリン、笛 太鼓等の和楽器)と踊りの臨場感、この相乗効果が実に見事。登場人物の衣裳は 和装から洋装、そして踊り手は 色鮮やか 軽やかな浮遊感ある衣裳で舞う。薄布を靡かせ舞うことによって場転換する、それで情況・状況の変化が一目でわかる。ちなみに踊り手衣裳の色彩は赤と青など補色、勿論 色には意味合いを持たせ、例えば赤は血であり絆、青は薄帯布を波打たせることで海などの情景を表現する。

    物語は、松下村塾の吉田松陰とその門下生を中心に描いている。そのため幕末、明治維新に関わる有名な人物や組織はあまり登場しない。例えば坂本龍馬や新選組など、魅力的な題材よりは<時代>という変遷(歴史)の中で、松下村塾の若者達がどのような<志>のもとで生きたか を紡ぐ。志士が駆け抜けた幕末・明治維新、それをテンポよく展開し飽きさせない。歴史を通して、未来を自分の意志で切り開くための経験値が示される。偉人の若かりし頃、挫折・苦悩等どう もがいて偉業を成し遂げたか、それを現代に繋げ考えさせる。

    演技は、とにかく情熱的な語りと動きが印象的だ。そんな中で高杉晋作の最期、正妻と妾の夫々の立場と実情を情緒的に描いた場面が胸に迫る。女優2人の好演もあり、泣ける場面として印象的だった。熱いと言えば、オープニングアクトの月性の<志>を抱いて生きているか、そんな台詞が全編を貫いている。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/08/31 00:41

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