『牢獄の森』『うれしい悲鳴』 公演情報 アマヤドリ「『牢獄の森』『うれしい悲鳴』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/08/19 (月) 13:00

    座席1階

    「うれしい悲鳴」を観劇。コリッチの説明文には「集団の狂気」とあるが、それ以上に深い洞察が込められているように思う。物語を追っていくとやや難解なところも多々あったが、随所に展開された、あれだけの人数の出演者による切れのいいダンスは見応えがある。

    たぶん、近未来の設定なのだろう。「絶対に例外はない」というルールが支配している社会で、命令の実行部隊である「泳ぐ魚」という会社のような公務員組織と、その例外なきルールによって家を追われ、母親が殺されることになる一家の物語。一家の長女である女性、この一家に乗り込んできた泳ぐ魚のメンバーである男性がいわばロミオとジュリエットのような関係で苦悩するという筋立てもある。
    「欠席結婚式」という主役がいない舞台を設定したのも面白い発想。「泳ぐ魚」はカルト集団のような様相も呈するが、そもそも「例外はなし」というルールで社会を締め付けている政治体制が元凶である。物語ではこのルールを覆そうという試みもなされるが、見ている方からするとはかない抵抗のような感じだ。

    これは、物事に白黒付けず曖昧なまま世の中が動いていく日本社会のメタファーであろう。「決められない政治」が世の中を悪くする原因だという批判は聞こえはいい。だが、現実の日本ではここ数年、与党による「勝手に決める」政治が幅を利かせ、世の中は急速に悪くなったのではないか。曖昧さを許さない社会、もしくは「決められる政治」の内実がいかに恐ろしいものであるかを、この舞台は暗示している。

    役者の動きはよかったが、絶叫する調子でのせりふが多いのは少し気になった。それはそれで迫力はあるのだが、特に女性のせりふで絶叫調が多く、キンキンしてやや耳障りだと感じた。
    ともあれ、カーテンコールの拍手の力強さからいっても、アマヤドリという劇団とそのパフォーマンスが若い客席に支持されていることは間違いない。

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    2024/08/19 18:28

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