魚雷モグラ’24 公演情報 ウラダイコク「魚雷モグラ’24」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     今公演はWキャスト。拝見したのは楽日、かすてらチームである。

    ネタバレBOX

     物語は1945年敗戦迄あと僅かという時期の長崎での物語。この期に及んで未だ真珠湾攻撃で用いられたと同じ型の魚雷を学徒動員で造らされていた女子学生や教師、地区指導員らの日常と8月9日午前11時2分のファットマン投下時の模様を描く。ユニークなのは、戦時体制下の女子生徒たちの前に現れるのが不思議なモグラ姉弟であることだ。而もこのモグラの姉は1人の人間の女性徒に凄まじい復習の念を持っていることである。理由は、この女生徒に父母を殺されたことであったが、人間にはその記憶すらない。
     女生徒たちは戦時教育をまともに受け止め、強制される価値観や道徳観、国家観や天皇を唯一の主権者とする大日本帝国憲法下で要求された社会規範を基本的には守り所謂優等生として生きる一派と、そんなことは本意でない、謂わばドイツのエーデルヴァイス海賊団運動に邁進していた若者のように一種アナーキーで人間としてより健全な「不良」グループ一派を形成する者ら、及びどちらにも属さない一般生徒に分れていた。この中でモグラの姉に呪われていたのは優等生グループの代表格の女子であった。彼女は所謂隠れキリシタンの末裔であるから宗派はカソリックの中でも最も厳格な宗派の一つであるジェズイット系、日本で人口に膾炙している言い方ではイエズス会系ということになる。このモグラの姉は神に祈ることでこの女生徒に復讐することを強く願うが結果として彼女のみならず長崎市民全員に大変な地獄を齎してしまった。モグラの姉はそこまでは望まなかったものの結果として原爆によって件の女生徒も被害を受け、多くの友を喪いこの後も苦しむことになる。その2人の会話の中で女生徒は自分が恨まれた訳を知り謝るが自分一人に復讐をして欲しかったと述べる。モグラもそうしたかったことが分かる答弁を返すものの幾らかは復讐を果たせたことによる安堵が無い訳でもない。何れにせよ、アインシュタインが導き出した以下の公式:E=MC²のEの項目に祈りの強度によるエネルギー発生があると仮定すると或いは相関関係が設定できるかも知れない。
     ところでこの強制労働に駆り出された女生徒たちを見守る教師の態度が当時としては極めてユニークなものとして描かれているのも今作の特徴である。というのも「不良」グループを決してありきたりなレッテル貼りで区別せず、例えば‟モサ“(掏摸の隠語)に財布を掏られた中年女性に掏られた財布を取返し追い掛けて返してやる等の善行も為している子供たちの良い面も評価しているかのような態度で接している等。因みに掏られた状況は分からぬものの一般にモサは集団でことにあたり直接掏る者、シキテン(見張り)を切(す)る者、掏った獲物を受け取り別の仲間に受け渡す者等が徒党を組んで犯罪を犯すのが普通なのでリアルな発想で検証すれば、女生徒が盗まれた財布を取り戻し、持ち主に返すこと自体が可成り難易度の高いことであることは言を俟たないが、まあ、小さなこと。義侠心に溢れた健全な女学生のイメージを示すには効果的な挿話と捉えれば良かろう。被爆時のこの女性教師の態度も立派である。
     何れにせよ少し頭の回る女生徒であれば、対米開戦で用いられたと同型魚雷をこの期に及んで製造させている大日本帝国の開発力の無さを忽ち見抜き、戦争は負けると確信を持って言うだけのことは出来る。何れにせよ被爆した無数の被害者の、世界で2度目の原爆攻撃による最後の姿を史実を踏まえキノコ雲の下で実際に起こっていたシーンとして再現する数々のシーンはリアリティーに富み、今作品の白眉でもある。会場からは、観客のすすり泣きや涙が鼻に流れすすり上げる音等が多く聞かれた。
     また、効果音等は殆ど口ジャミで表現されていたこともユニークな上演形態であったが、敗戦間近の日本民衆の窮乏を示唆しているようでもあり、また日本政府の文化事業に対する熱意の無さ、無関心を示しているようでもあり、政治屋及び官僚の非文化性を如実に示してこれはこれで示唆的だ。

     ところで、何故今原爆の話なのか? 根本的な問いが観客には問われていよう。今更言うまでもないが、ロシアによる戦術核使用の脅しと準備は着々と進んでおり、第三次世界大戦が始まるのではないか? との懸念は多くの民衆に共有されている。

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    2024/08/08 15:01

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  • 如月せいいちろーさま
    ハンダラです、コメントの返信が遅くなり
    申し訳ありません。今回作品を拝見した後、
    何人かの女性たちと話をさせて頂いた折、DU(劣化ウラン)
    の齎した害としか考えられない様々な症例の写真をお送りする
    約束をしていたので、この件に関してメンバーの方々から
    どうなっているのか? についてのお問い合わせがあったのかも
    知れないと思っていますが、何せ核に纏わる話は、IAEA,ICRP等々
    世界的権威を装う組織が実は嘘ばかり垂れ流しており、原子力ムラは
    何も日本の専売特許ではありません。世界中の推進派が束になって結束しいるのが
    実情です。
     失礼ながら如月さんの核に関する知識はまだまだ多くは無いことは、文章を拝見して
    想像していましたので、余りに専門的な話から入ってもご理解頂けまいと愚考し、先ずは
    基本図書を選定してリストをお送りする処から始めようとしているのです。まあ、IAEAにせよ、ICRPにせよ、WHOにせよ、少なくとも核被害については内部被ばくを意図的、或いは構造的に隠蔽、過小評価しているのが実態なのでそのことについても書かれた本を
    少し初歩的な知識を得てから紹介するつもりです。初歩的な本についてはなるべく早く
    連絡させて頂きます。よろしくお願いします。尚、DUの被害写真としか考えられない写真については、話をした女性総てに物凄くショッキングな写真であること、それでも
    見たいか? について質問し総ての方々から、イエスの回答を頂戴しているのでウラダイコクのメルアド宛てでよろしければそちらに基本図書リストをお送りする際に添付して
    お送りします。
                                        机下

    2024/08/28 03:48

    ハンダラさま
    いつもたくさんのコメントありがとうございます!拝見させていただきました!!
    知識量の豊富さに感服いたしました。まだまだ勉強不足なのだなと、励みになります。

    所謂「戦争もの」の作品は数多ある中で、ウラダイコクでしか描けない作品を模索している最中で、今年はご覧いただいたような作品になりました。
    作り手として、感想を頂けること、心より感謝です。

    あのキノコ雲の下で、生きようとしていた命を丁寧に来年も紡いでいきますので、これからもどうぞよろしくお願い致します!

    2024/08/26 04:47

    ウラダイコクの皆さま
    発表が大変遅くなり申し訳ありません。
    漸くあっぷしました。ご笑覧下さい。
                    ハンダラ 拝

    2024/08/08 15:03

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