百こ鬼び夜と行く・改 公演情報 仮想定規「百こ鬼び夜と行く・改」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い、お薦め。
    考えさせるテーマ、それをエンターテインメントな観せ方で飽きさせない。表層的には人間の愚かさを描きつつ、それでも愛すべき存在であると。妖魔界そして人間界、それをキャストは1人複数役を担い紡いでいく。
    見所は、外見から瞬時に怪(妖)しの世界へ導き、説明の「蛙の鳴き声が煩くて眠れない」という(苦情)投書に繋げていく。ミュージカルとして歌が(上手か)どうかは別にして、観(魅)せ、楽しませるという点では好かった。

    上演時間は事前情報では1時間45分とあったが、実際は1時間20分程(休憩なし)。

    ネタバレBOX

    舞台美術は入口の所に朱鳥居、そこに劇中重要な千社札が貼られている。後景は竹が描かれた白幕が等間隔に3枚、その前には切り株か岩(ラストは注連縄)がある。情景の変化によって白幕を回転させ赤幕にする。この幕の表裏が人間界、妖魔界といった違いを表す。
    また冒頭は、客席寄りにキャスト・スタッフの名前が入った提灯が置かれている。なお、観た日は英語字幕付き公演だったため、2列目上部に黒の横板(枕木のよう)に白文字テロップを映す。上演前から蛙の鳴き声。

    舞台は、打ち棄てられた神社の境内とそこにある池。客席をこの池に見立てている。最近町内に引っ越してきた男 神原一(はじめ)、町内会長は彼に投書の処理をさせようとする。途方に暮れた神原は池に石を投げ込むが、大蝦蟇が現れ石を投げないよう頼む。この大蝦蟇を介して妖魔界を覗いてみると、人間の愚行ーー災害から守ってくれていた大木を伐採する といった自然破壊が浮かび上がる。
    なお「投書」そのものを最近の風潮である不寛容に結びつけてしまうと対立軸が暈けてしまう。つまり「鳴き声の煩い」は何を示唆もしくは象徴しているのかを捉え 描いている。公演では妖魔対人間という分かり易い構図にしている。
    人間 生まれた時は裸、最初に(付けて)もらうのが名前。妖魔界で力を持つ第六天、人間の名前や楽しみを喰らい生き永らえている。それが神原の母になったり…神原が忘れてしまった尊き心を思い出させる。人間には名前があって1人ひとりが違う。同じように妖魔界の要石・烏天狗・ろくろ首・九尾の狐など多くの異形を登場させ、人間に準えれば、夫々に個性や役割があり大切なものになる。
    引っ越してきたばかりで、自分には関係ない。そんな見て見ぬふりをする姿、ラストになって明かされる町内会長の名前「境 獏」。人間界と妖魔界の境にあって夢を喰らう獏を連想させる意味深な存在。そして蛙の鳴き声が煩いのは、自然破壊による災害への警鐘…その意味では色々なことを考えさせる珠玉作。

    化粧や衣裳が独特、白塗りにタトゥーアート、被り物で怪しげな雰囲気を醸し出す。また投書を燃やすシーンではマジックを見ているような錯覚。音響ではエコー効果を効かせるなど工夫を凝らす。シリアスな内容だが、歌い(時にスタンドマイクあり)踊り、賑わいを演出する。

    少し気になったのは、妖魔を前に神原と大蝦蟇が右往左往する、それを上手・下手を行ったり来たりするが、その回数が多く諄いような。また、海外公演バージョンとして英語字幕を少し読んだが、ほとんど(冒頭以外は)台詞だけのようで、日本独自の風習なり土俗的なト書き、ナレーション的説明があると分かり易いかも。
    最後に上手の赤幕に書かれていた字は何て読むのだろう。「旬」なら解るが「勹」の中に「目」(⇐見間違えか?)。終演後に聞けばよかったが忘れた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/07/21 00:06

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