ロロ vol.4 ボーイ・ミーツ・ガール 公演情報 ロロ「ロロ vol.4 ボーイ・ミーツ・ガール」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    貫かれる寓意に目を見張る
    冒頭のシーンから、
    その表現に一気にとりこまれて・・・。

    貫かれていく寓意の鮮やかさに目を見張り、
    ストレートさで編みあげられていく
    その心情のしなやかな弾力が
    舞台を閉塞させずに突き抜けてさせていくことに
    息を呑みました。

    ネタバレBOX

    どちらかというとシンプルな舞台美術なのですが、
    タイトルがあからさま、かつ、お洒落に描かれていて、
    開演前からわくわくする。
    役者の出掃けが見えるところが
    心に浮かんでくるものの去来にも思えて。

    すっと始まる物語。

    男は100人目の女性と別れたという・・・。
    相手の
    めぐっては元に戻る台詞たちの中で
    繰り返し、次第にうすれていくような
    別れの感覚が
    したたかに表現されて・・・。

    前半から、その心情のどこか揺らいだ部分が
    しなやかな寓意にのせられてやってくる。
    その段階で、すでにある程度舞台に惹かれていたのですが、
    風船や殺人鬼、
    さらには舞台上での生き死にのニュアンスが
    ふっと腑に落ちた刹那、
    舞台上に展開する寓意のひとつずつが
    強くまっすぐな力となり
    一気にとりこまれてしまいました。

    いろんな表現が、
    一つずつ創意にあふれ本当に鮮やか。
    たとえば風船を割るというまっすぐでベタな表現が
    記憶や意識の喪失感を、ダイレクトに観る側に注ぎ込んでくれる。
    舞台に現れるものそれぞれの意味が
    「記憶」とか「愛」と「悲」かいった概念を飛び越えて
    その質感として観る側にやってくるのです。
    玉ねぎがハンバーグに変わる顛末とか、
    生きかえらせた命のシェープや
    それが形を作って渡される姿などには、
    ぞくっとくるような寓意の奥深さがあって。

    さらには
    アフタートーク(初日)などでも語られた
    場所をすらっと塗り替えるようなその手法に
    心の移ろいやしなやかな変化が
    体感に近い感じで観る側に伝わっていく。
    役者たちにも、それらの寓意を維持する足腰と
    舞台の色をもたつきなく変えるだけの切れが備わっていて。

    様々に見立てられていくものが
    くっきりと観る側の感覚に織り上げられていきます。
    内心の閉塞や揺らぎだって、記憶の浮沈だって、
    出会いの感覚だって
    きっとこの表現だからこそ伝わってくるもの。
    個々のニュアンスが、
    ただワンショットのアイデアとして提示されるのではなく、
    その中にアイデアを動かすさらなる創意があるから
    舞台上のどこか薄っぺらい表現ですら、観る側に置かれると
    まるで水に戻された魚のように泳ぎだすのです。

    だから、終盤の新しい恋に向かう心情の表現も、
    ウェルメイドであったり陳腐な感じがまったくしない。
    記憶たちをブリッジにして新しい恋に向かう姿も、
    羽根をつけて香水までばら撒く満艦飾の装備にしても、
    記憶たちに阻まれながら凌駕していく姿も、
    全てがヴィヴィッドでうれしくなるほどピュアに思える。

    観終わって、柔らかく高揚がほどけていく中、
    ここまでに観る側を導いた
    作り手の創意の豊かさと
    具現化する手練にあらためてぞくっときた。

    初日ということで、
    細かい舞台の空気の隙間とか
    若干の手番のもたつきはあったものの、
    物語のコアにある、
    素敵に苦くて甘酸っぱいどきどき感が抜けないままに
    劇場を後にしたことでした。

    ○〇○●●☆☆

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    2010/08/19 12:56

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