ナイロン100℃ 49th SESSION 「江戸時代の思い出」 公演情報 ナイロン100℃「ナイロン100℃ 49th SESSION 「江戸時代の思い出」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    ナイロンの49回目の公演。30周年の記念公園でもある。90年代から、独立独歩。一貫して自分の世界を追求して、ぶれることなく、官の栄誉を求めることなく、多くのファンも集めて日本の演劇史上独自の作品を作り続けた。たいしたものである。
    タイトルからして、平易なようだが、このとぼけたような思い出の中にはKERAの世界が詰まっている。
    ナイロン初の時代劇というとおり、幕が開くと江戸時代らしき小山の上の街道筋の峠の茶屋。道具は一杯だけだがそこで二幕3時間20分(休憩15分)の舞台が始まる。記念公演だから、ナイロンの歴史を紡いできたおなじみの俳優たちが総出演で、一言でいえば、不条理劇のナンセンスコメディ調現代劇が展開する。
    軸となる登場人物は峠の茶屋を守る「お肉」「お魚」「お野菜」と名付けられた三人娘。(犬山イヌコ、松永玲子、奥菜恵)、訪れる旅人は浪人・武士之介(三宅弘城)と大名行列からはぐれた家来・人吉(大倉孝二)。丘の下の村では祭りが行われているが、実は飢饉が進んでいて、三人娘はお互いを食いかねない状況だ。物語は大名行列から外れた人吉が、武士之介に呼び止められ、武士之介の思い出話を無理やり聞かされるところから始まる。
    二幕の舞台は4っつのエピソードに分かれていて、一応、エピソードとして完結しスクリーンで「○○話・莞」とも出るが、緩やかな連作形式である。
    思い出話は最初は武士之介のもののようだが、物語の展開で、誰の思い出かも、話される話の時代設定もよくわからなくなる。物語の担い手も、丘の上に小学校の時に将来の夢を埋めた考古学研究会のメンバーが掘り起こしにやってきた思い出話、とか茶屋にやってきた殿様一行と祭りの時の瓦版売りの思い出、とか、何かの記憶を軸として思い出話がナイロンの名優たちによって奔放に展開する。客席も使った観客や本多劇場の管理人まで登場するバレネタもある。
    ナンセンスな物語が、ナンセンスな枠取りの上に展開するのだから、客席からは笑いが絶えない。笑っているうちにお開きになるのだが、ドラマの核には現代劇のテーマが見事隠れている。残酷非情の現実は笑って過ごすしかない。思い出話はその時には、力があるかもしれないし、また残酷に無力かもしれない、だが、そこで行列を作って生きていくしかない。
    まずは、観客は野田と並んで二人の優れた劇作家と時代を共有できたことを喜こびたい。
    ひと月の半ばにかかろうとしているところ、若い成人客層を軸に多彩な客席満席。

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    2024/07/03 10:47

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