ワーニャ伯父さん×母がいた書斎 公演情報 S.H.Produce「ワーニャ伯父さん×母がいた書斎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    観(聴き)応え十分。
    「ワーニャ伯父さん」…どんなに辛く厳しい現実があろうとも生き抜く、そんなメッセージを印象深くさせる演出が良い。「母がいた書斎」…無難にまとめたといった感じだが、こちらの作品も演出が巧い。どちらの作品もキャストの感情に訴えかけるような熱演(朗読)が物語の世界へ強く引き込む。
    (上演時間1時間40分 休憩なし)【Aチーム】

    ネタバレBOX

    舞台美術は 後景に何枚かの白紗幕、黒っぽい壁(暗幕?)と相まって鯨幕のように見える。舞台前後に段差を設え スタンドマイク(前4本、後2本)、キャストは立ち位置を固定せず、マイク間を移動する。この動きは、感情や場所といった精神的・物理的、そして会話する相手との距離感の変化を表しているようだ。登場しない時には、上手 下手にあるパイプ椅子に座り待機している。

    ●「ワーニャ伯父さん」
    ワーニャ(新濱 卓サン)が自分の人生(47歳)を顧み 無駄に過ごしたと苦悩するが、それでも姪ソーニャ(桜羽萌子サン)が、いつか来るその時まで生き抜くことを諭すといった、よく知られた物語。
    始まりと終わりに 登場人物(キャスト)が一瞬静止するが、それによってチェーホフの閉塞した世界観とは別の光景が描かれているといった印象だ。勿論 描かれている内容の根幹は変わらないが、何となく現代的といった感じだ。劇中 何気に雑踏・雑談のような外の世界が入り込むようで、約130年前に書かれた物語を現代から俯瞰したような。それは後景の鯨幕(枠)のような美術と相まってモノクロ映画で「ワーニャ伯父さん」を観たような感覚。

    語りは 下男(足立彬光サン)と乳母(伊庭波弦サン)、この2人は黒い衣裳でその外見から黒子、そして淡々とした語りで感情表現をしない。それはト書きでありナレーションのようで見事な語りに徹していた。一方、登場人物はそれぞれが役に見合った衣裳。さらにワーニャの義弟セレブリャコーフ(多田健悟サン)はメガネをかけ老境を、その妻エレーナ(星いくみサン)は若くして美貌を表すためウィッグで長髪、といった外見にも気を配る。他に医師アーストロフ(米山真平サン)、母マリヤ(中村伊佐サン)。演技(朗読)は 聴きやすく、感情が迸った熱演が良かった。ただ 少し早口で悲哀が…惜しい。
    舞台技術、特に照明の諧調は巧い。紗幕の上下から照射することで情景や状況の変化、スポットライトで人物の心情を表現する。橙色彩で温かさ、銃声の瞬間は青白い閃光といった印象付け。また音響・音楽は、朗読劇ということもあり、あまり目立たないようにしているが、帰りの時に鳴る鈴や優しいピアノの音色が心地良い。ラストはJupiterを選曲し余韻を…。

    ●「母がいた書斎」
    物語は、概ね説明にある通りだが、予備校の講師への片思いという感情は あまり感じられなかった。ヒロイン 弥永香奈(有藤詩織サン)は女医であった母 路津子と同じ道を歩もうとしている。幼い頃に亡くなり、その思い出・記憶はほとんどない。受験勉強、進路に悩んでいた時、母の書斎で見つけた<母の日記>を読み、といった物語。
    ワーニャ伯父さんで夫婦を演じたセレブリャコーフとエレーナは、夫々 メガネやウィッグを外し、今度は若々しく現代的な夫婦(一宏・路津子)を演じる。またワーニャ伯父さんでは語りを務めた下男が 予備校講師 松尾尚人、母マリアが 一宏の上司(婦長) 東美保として感情表現する等 魅(聴か)せる演技が見事。舞台技術は上述と同じ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/06/23 17:11

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