実演鑑賞
満足度★★★★
映像やメカの模型を一切使わず、見立てと人力で未来少年コナンを舞台に再現したところが見事。アニメのあれこれの名場面を思い出した。モンスリー(門脇麦)の回心(痛みの回復)やレプカ(今井朋彦)の力の哲学はセリフを補筆して深みがあった。「バカね」の名セリフもあって堪能した。
人間関係の変化を、長いダンスやパフォーマンス場面で見せていたのがよかった。コナン(加藤清史郎)とジモシー(成河)が最初の反発から親友と認め合うまでの競い合いなど。特によかったのは、がんボート上でダイス(宮尾俊太郎)とモンスリーが、磁気拘束具のリモコンを奪い合いながら、ダンスのようにもつれあって関係を接近させるシークエンス。
海、風、砂から、射撃音や足音、飛行機の音など、すべての効果音を舞台袖でミュージシャンがその場でつくる。紗幕を通して客席からも見えるつくりも、今回の成功した試みとして挙げておきたい。
幕開けのモンスリーとおじいの対話は、戦争を起こした大人たちを責める戦後世代と、過ちを繰り返すなと諭す戦争世代の対話として、日本の戦後のそれぞれの言い分と重なった。アニメ「未来少年コナン」が、敗戦と復興という戦後状況をそのまま映していたことに気づかされた。