実演鑑賞
満足度★★★★
映像やメカの模型を一切使わず、見立てと人力で未来少年コナンを舞台に再現したところが見事。アニメのあれこれの名場面を思い出した。モンスリー(門脇麦)の回心(痛みの回復)やレプカ(今井朋彦)の力の哲学はセリフを補筆して深みがあった。「バカね」の名セリフもあって堪能した。
人間関係の変化を、長いダンスやパフォーマンス場面で見せていたのがよかった。コナン(加藤清史郎)とジモシー(成河)が最初の反発から親友と認め合うまでの競い合いなど。特によかったのは、がんボート上でダイス(宮尾俊太郎)とモンスリーが、磁気拘束具のリモコンを奪い合いながら、ダンスのようにもつれあって関係を接近させるシークエンス。
海、風、砂から、射撃音や足音、飛行機の音など、すべての効果音を舞台袖でミュージシャンがその場でつくる。紗幕を通して客席からも見えるつくりも、今回の成功した試みとして挙げておきたい。
幕開けのモンスリーとおじいの対話は、戦争を起こした大人たちを責める戦後世代と、過ちを繰り返すなと諭す戦争世代の対話として、日本の戦後のそれぞれの言い分と重なった。アニメ「未来少年コナン」が、敗戦と復興という戦後状況をそのまま映していたことに気づかされた。
実演鑑賞
満足度★★★
役者のファンイベントとしてなら大成功なのだが…
脚本が相当ひどい。むろん原作が悪いわけでない。アニメならではの場面の多さを処理しきれておらず、客が舞台上に起こされる場所が何かを把握できないまま進むことも多々。気づいたら人物がはぐれたり、合流していたりする。
その場でことを起こさずに、後出しの説明台詞で明かされることもしばしば。その説明台詞すら流れが飛び飛びのため、え、今その話題に遡って泣き出すの?となるにまで至る。
全体として、エンタメではなく、アートよりの作風で、コンテンポラリーダンスを多用している。効いているところもあるし、動きだけで笑わせる妙もあるが、全ての場面を美しくしようとする余り冗長になっているのは否めない。
よかったのはどんな場面にもおかしみがあるところ。人物たちに好感は持てる。一方で、対立や葛藤が唐突に遮断されるため感情移入の余地はない。
コナンの超常的な動きをセットやアンサンブル、仕掛けを駆使して無理なく成立させている。および、各場面のシーンメイクに対応する装置も上手い。役者の体も概ね対応している。一方で手数のかけ方が均されているため、思いきった取捨選択をして、何か1場面でも想像を超えるものがないと客は感動しないのではないか。